不倫ネタが話題にもカネにもなる風潮の危難 非日常から身近に、崩れる罪と罰のバランス
話を週刊誌に戻すと、私自身、各誌と仕事をすることもあり、編集部員や記者の知人もいますが、「本が売れないことには給料がもらえず、生活ができない」というのが本音。もっと言えば、それ以前に「売れなければ怒られる。仕事をもらえない」という切迫した不安や、「不倫スクープで成績を上げて稼ぎたい」という強い欲望を抱いています。
また、不倫報道で売り上げが伸び、反響が大きければ、編集部は「引くに引けない」モードへ突入。私が取材した限り、前述したほとんどの週刊誌で「次も不倫を狙わなければいけない」「不倫を優先的に狙う」という状況が起きていたのです。
事実、知人の週刊誌記者は「昨年、不倫スクープを取った人が忘年会でヒーロー扱いされ、表彰されていた」と話していました。ただ、これもあくまで消費者サイドのニーズがあるから、編集部内でヒーロー扱いされてしまったのです。
ベッキーさんと川谷絵音さんの騒動以来、週刊誌だけでなく、世間全体で芸能人の不倫を叩き続けてきました。ただ、昨年中盤あたりから、「もういいのでは」というムードが少しずつ漂いはじめ、今回の騒動で「もうやめろ」という週刊誌サイドへの批判が顕在化。「もはや行きつくところまでたどり着いた」とも言えますが、だからといって世間の人々が「芸能人の不倫に興味がないか」と言えば、決してそうではないでしょう。
芸能人以外の不倫も口にしないのが得策
しかし本来、芸能人の不倫は、町内や社内の噂話と同レベルのはず。「一度も会ったことがない」という意味では町内や社内以上に縁遠い存在なのですから、立場のあるビジネスパーソンなら、こうした噂話レベルにすぎない他人の不倫に関してはコメントしないほうがいいでしょう。少なくともSNSでのコメントはリスクマネジメントの観点から避けるべきです。
最後に、小室さんは報道をきっかけに引退表明しましたが、会見を見る限り、その理由は不倫騒動だけではないのでしょう。体調不良、介護疲れ、売り上げや品質などへのプレッシャーなど、さまざまな理由を想像させるフレーズがあっただけに、今ごろホッとしているのかもしれません。
もし今後、小室さんが音楽人として再び表舞台に顔を出したくなったとき、「私たちはメディアに踊らされて騒動を蒸し返すのではなく、温かく迎えられる世間の人々でいられたら。そんな世の中であってほしい」と心から願っています。
そのためには、週刊誌だけでなく、マンガやドラマをはじめ、「不倫をめぐるビジネスが、世間の人々をいたずらに刺激しないものであってほしい」と思うのです。
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