不倫ネタが話題にもカネにもなる風潮の危難

非日常から身近に、崩れる罪と罰のバランス

不倫というネタに各企業が依存し、リアリティーを醸し出すことで、人々の感情を揺さぶり……。このような世間の人々を誘導するようなビジネススタイルが、必要以上の批判を生み出しているのではないでしょうか。

すでにいくつかのメディアで伝えられているように、不倫は民法における不法行為に該当するものの、刑法上の犯罪ではありません。警察や国が刑罰を与えるものではなく、「夫婦と不倫相手などの当事者間で解決すべきもの」に過ぎず、損害賠償が求められ、慰謝料を支払うことはあっても、逮捕されて懲役や罰金が科せられることはないのです。

先述した不倫マンガや不倫ドラマは作品が最終回を迎えればおしまい。しかし、週刊誌で報道された実在する人間は、当事者ではない多くの人々から攻撃され、ビジネスどころか日常生活すらままならなくなってしまいます。

ほう助するのも、罰を与えるのもNG

実際、私がよく知る芸能人は、不倫疑惑を報道され、「僕は少なくとも半年間は出歩けなかったし、家族も近所のスーパーやコンビニで買い物すらできなかった」と言っていました。ちなみに、彼は「不倫というより、一度の浮気だった。家族に申し訳ない」と弁明していますが、もしこれが真実なら、やはり罰は重すぎる気がします。

本来、エンターテインメントも同様に、当事者間だけのものにすぎません。今回の例で言えば、世間の人々が作り出した重いムードが、「小室さんの楽曲を聴きたい人だけ聴けばいい」という当事者間の自然な関係性を崩したのです。それを感じ取った小室さんは謝罪や引退を決意したのではないでしょうか。

私は人間関係のコンサルタントもしていて、全国の人々からさまざまな問い合わせが届くのですが、不倫に関わる相談も少なくありません。「不倫相手と妻(夫)を何とか離婚させたい」「既婚ですが、好きな人ができて交際したい」など相談内容はそれぞれですが、「不法行為のほう助になってしまう(私も損害賠償の対象になる)」という理由ですべて断っています。

もし不倫が犯罪であれば、私は警察に通報しているでしょう。私だけでなく当事者以外の人にとっては、「ほう助をしてはいけないし、罰を与えるべきではない」ものに過ぎないのです。

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