埼玉製防具をMLB選手70人が愛用する理由 一度倒産した会社が奇跡の復活を果たした
そんな永井氏を支援したのが、旧知の取引先でベルガードブランドのファンたちだ。アンパイアショップを運営する元プロ野球審判員、ソフトボールの審判用品を販売する会社の女性社長といった人が注文してくれた。受注が増えると、旧会社のベテラン職人も3人入社した。フェイスブックなどSNSでの情報発信も、商品告知と売り上げ拡大になったという。
話題の「コラボ商品」も開発した
倒産から6年。ベルガードは「MLB選手が愛用する野球防具メーカー」に急成長した。メディアへの露出も多く、コラボレーションの依頼も大幅に増えたという。
現在、同社が最も注力するのは“パワーを生むウエア”を掲げた「アクセフ・ベルガード(AXF×Belgard)」というコラボ商品だ。アパレルメーカーのサンフォード(本社・岐阜県岐阜市、吉田國廣社長)から申し入れがあり、サンフォードと機能面でも技術連携していたテイコク製薬社(同・大阪府大阪市、畠山兼一郎社長。高齢者の転倒防止ベルトなども製作)との3社共同開発だという。
このウエアを着ると「リカバリー」「バランス感覚」「体幹の安定」が向上するという機能性衣料の一種で、特許も出願中だ。実際の機能性と効果は、商品を購入した人に判断を委ねたいが、永井氏自身が、国内外の出張や番組出演時などに関係者に紹介し続け、試着や実践した人からも好評を得ている。2017年11月に発売したウエアは2カ月で約1000枚も売れた。この技術は野球用具(グローブ、バット、防具)にも応用し、「アクセフ・ベルガード」の新商品として、次々に発売される予定だという。
「商品の評判は非常によく、注文も多いです。この効果をより多くの方に体感いただきたいので、今後は良識ある研究者や第三者機関の評価などエビデンス(根拠)を充実させて『信頼性の高い商品』にするのが課題です」(同)
ビジネス環境が一気に変わる現在は、従来の強みが弱みになることもあれば、環境変化によって復活できる事例もある。この違いには「志ある社員の意識」も大きい。ベルガードの場合も「ウチの会社のここがおかしい」という当事者意識を持った元社員が、倒産(という環境変化)を機に商標を引き継ぎ、OEM商品を自社ブランドに変えてV字回復を果たした。
「今は、逆説的な言い方ですが『倒産してよかった』と思います」と語る永井氏――。厳しい環境に置かれながら、自力で再生を果たした本人だから言える言葉だろう。
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