埼玉製防具をMLB選手70人が愛用する理由 一度倒産した会社が奇跡の復活を果たした
なぜ、従業員4人の町工場にMLB一流選手からのオファーが殺到するのか。ベルガードファクトリージャパン社長の永井和人氏は次のように話す。
「当社の野球用品は、主力商品である防具のほか、グローブ・ミットが中心です。バットやスパイクなども手掛けますが、大手メーカーのように幅広く扱わず、自社の得意分野に注力します。製作では徹底して丁寧な仕事を心掛けており、それがMLB選手にも好評なようです。現在約70人の選手が愛用し、9球団の4番打者(経験者)も使っています」
防具はすべて日本製で、国内の職人が手づくりで製作する。たとえばレガース(すね当て)の製作では、各箇所を熟練職人がミシンで縫い合わせてつくる。「当社の強みは『メイド・イン・ジャパンのクラフトマンシップ』です」(永井氏)を実践する作業だ。
商品には特注品と汎用品があり、特注品は選手個人の要望に、きめ細かく対応する。
「たとえば『打者のファウルチップのはねかえりが、(捕手用)レガースのつなぎ目に当たって痛い』という声が選手から上がれば、その部分を保護する防具に改良します。また、動きやすさや使い勝手から、素材やデザインを変えることもあります」(永井氏)
これらは“機能性”の話だが、有名選手にとって、防具は自己アピールも兼ねる存在でもある。そこで選手の名前を筆記体で入れたり、打撃フォームのシルエットを入れたりなど“情緒性”への訴求も行う。商品には「ベルガード」と日本語で記すこともある。
一流選手が「契約金ゼロ」でアピール
同社は、有名選手には用具のみを無償提供し、マイナー選手やアマチュア選手には有償販売するのがビジネスモデルだ。だが、評判を聞きつけたMLB選手がネット通販で買うこともあるという。商品の価格は、たとえば打者用防具は、上下(アームガードとフットガード)セットで約200ドル(約2万2000円)だ。ちなみに超一流選手でも契約金は支払わない。
「一流選手の中には、気にいってくれると契約更改時に『あのメーカーの商品を使いたい』と代理人を通じて交渉してくれる例もあるようです。そうなると翌年以降は球団から注文が来ます。また、選手自身のSNSで、自らPRしてくれるケースもあります」(同)
これも、従来のスポーツ用品メーカーとは異なる販売促進といえよう。
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