埼玉製防具をMLB選手70人が愛用する理由 一度倒産した会社が奇跡の復活を果たした

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日本のプロ野球でも同社商品を愛用する例は多い。たとえばダヤン・ビシエド選手(中日ドラゴンズ)、サビエル・バティスタ選手、アレハンドロ・メヒア選手(ともに広島東洋カープ)、エルネスト・メヒア選手(埼玉西武ライオンズ)、ステファン・ロメロ選手(オリックス・バファローズ)、ロエル・サントス選手(千葉ロッテマリーンズ)らだ。

お礼の写真を送ってくれたヨニエス・セスペデス選手(ニューヨーク・メッツ)(提供:ベルガード)

こう紹介すると外国人ばかりだが、実は日本のプロ野球では、大手メーカーと専属契約する日本人が、それ以外のメーカー商品を使うのはむずかしい。以前、首位打者も獲得した日本人選手から依頼を受けたベルガードが防具を提供したが、専属契約がカベとなり、その選手は試合で同社製の防具を使えなかった。

MLBや国内の外国人選手は、そうしたしがらみもなく、自分の使いたい用具を選びやすいという側面もある。これがベルガード愛用者に外国人が多い、もうひとつの理由だ。

6年前の「倒産」で、利益率が高まった

実は同社は一度倒産している。6年前の2012年2月20日のことだ。当時、勤続30年のベテラン社員だった永井氏が、社内で仕事をしていると突然会議室に呼ばれた。室内に入ると弁護士(後に管財人)がおり、「会社は今日で終わりです。明日からは社屋に入れません」と通知されたという。翌21日、ベルガードの破産手続き開始が決定し、倒産した。

そこからの永井氏の行動は迅速で、たった1人で存続を図り、ベルガードファクトリージャパンを設立した。その原動力となったのは、顧客の存在と自らの問題意識だったという。

「春からの野球シーズンを控えて注文も多く受けており、お客さまの商品への期待を裏切ることはできませんでした。また、私自身も将来の独立を視野に入れて、早稲田大学の起業家セミナーに通い勉強もしていた。それなら自分で再生しようと考えたのです」(同)

「ベルガード」の商標を引き継ぎ、再スタートしたのは4カ月後の2012年6月だった。この時間差で大手メーカーとの取引も軒並み終了となったが、それが結果的に幸いしたという。

「倒産した会社は、大手のOEM(相手先ブランドによる製造)を多数引き受けており、利益率も非常に低かった。多額の費用をかけて商品カタログを制作するようなムダもありました。新会社では、商品を利益率の高い自社ブランドで出し、コストも削減したのです」(同)

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