占領下で高まるパレスチナ人の孤独と閉塞 「見過ごしている国際社会も大きな責任」
堀:日本や中国という名前があがるのですね。
山村:そうですね。イスラエル占領下での苦しいパレスチナの状況を作った人たちは外して、それ以外の人たちにやってほしいというのは確かにあると思いますね。
パレスチナ人の孤立感・疎外感
堀:「オスロ合意が失敗だったと証明された」というのは、どのような思いでそのパレスチナ人は発言されたんだと思われますか?
山村:そうですね。「自分たちがずっと和平合意において当事者になれなかった」という思いはずっとあると思いますね。人々の意見が反映されるような政治でもありませんでしたし。今回も国連安保理で「二国家解決(*4)」という発言が出てきていたのですが、実際に現地の方達に聞くと、「二国家解決」を望んでいる人ってあまりいなくて。1つの国の中でユダヤ人とアラブ人が、同等の権利の下で一緒に共存して暮らしていくのが現実的だと考える人が非常に多いです。しかし、そういうことを国連や西欧諸国もあまり認識していなかったり、認識していてもやはり「二国家解決」という言い方をしたり。どんな状況においてもパレスチナ人の方々の声がいろんな場面で反映されていないということを、現地の人たちとやりとりをする中で意識するようになりましたし、すごく痛感しています。彼らの意見がどんな場面でも反映されないというのは非常に深刻な問題だと思います。「自分たちのリーダーも好きになれないし、だからと言ってイスラエルやアメリカのリーダーももちろん好きになれない。アラブ諸国も救い出してくれない。自分たちの政府ですら腐敗していて頼れる人がいない。自分たちを救い出してくれる人が誰もいない。自分たちは見捨てられているんだ」という発言を現地の皆さんはされています。
(*4)「イスラエル・パレスチナ双方の間では、難民、入植地、エルサレム、国境画定など個々の問題の解決を図って、イスラエルとともに共存共栄するパレスチナ国家を建設することが目標とされている」(外務省ホームページより)
堀:周辺のアラブ諸国の皆さんからの疎外感というのは深刻みたいですね。
山村:そうですね。特に、カタールからガザへの支援が止まってしまった時は、疎外感が非常にありました。また、常日頃からサウジアラビアやアラブ首長国連邦など石油で潤っている国がアラブ諸国の難民をきちんと受け入れないという現状や、産油国で働いているたくさんのパレスチナ人が苦しい待遇で暮らしているという状況もあります。「自分たちだけ潤って、なぜ同胞を助けないんだ」「どうして私たちだけがこのような暮らしをしなければならないんだ」というのは、パレスチナ人の中に根強くあると思います。特に、アメリカと仲良くしているサウジアラビアについては、「結局彼らもイスラエルの味方なんだ」という言い方をされる方も。そういった不満は非常に大きいと思います。
堀:2017年4月に僕が山村さんたちに同行させてもらって現地に行った際にも、「世界中から忘れ去られて孤立した存在になっている状況をどうにかしてほしい。世界中が関わってほしい」という訴えを、一緒に車で回ったドライバーの方もお話されていましたよね。
山村:そうですね。トランプ大統領の発言があってから、様々な国でデモをしている情報を現地の皆さんはニュースでチェックしています。「日本でも大阪と北海道でデモをやっていたよね」「自分たちと一緒に連帯してほしい」「おかしいということをきちんと声を上げて言ってほしい。そしてちゃんと政府に訴えてほしい」「あの発言は間違いだったということをちゃんと世界の人たちに日本人もアピールしていってほしい」とすごく言われましたね。