占領下で高まるパレスチナ人の孤独と閉塞 「見過ごしている国際社会も大きな責任」

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:彼らの中での「おかしい」というのは、一番何が「おかしい」という訴えだと受け止めればよいのでしょうか?

山村:世界でNo.1の権力と軍事力を持ったアメリカが背後に立った状態でイスラエルがパレスチナを潰そうとするのは、明らかに人権に反しています。「私たちと一緒に立ち上がってほしい」「この明らかな人権侵害に対してきちんとNOと言える世界であってほしい」という思いを彼らの中に感じます。

:「天井のない監獄」とも言われるような状況をなぜ放置しておくのか、ということですよね。

山村:そうですね。私も現地にいて、なぜこれがまかり通ってしまうのかということを毎日考えます。世界が倫理観ではなく、お金や権力を中心に回っているということの象徴なんだろうなと思っています。「ユダヤ人が迫害にあってこの地に来て、イスラエル人たちも他に行くところがないんだ」と分かっていて、実際に口に出して言うパレスチナ人もいました。アメリカがイスラエルをサポートしていることに代表するような、変えられないシステムの中でやっていかなければならないという悔しさや絶望があるんだと思います。

「沸騰した鍋に蓋が閉まっているような状態」

:トランプ大統領の発言がある前からいろんな緊張があったと話されていましたが、その緊張は具体的にどのようなものだったのでしょうか?

山村:そうですね。イスラム教徒が出入りするエルサレム旧市街のダマスカス門をイスラエル兵が立って管理しているという状況が起きているのですが、そこのイスラエル兵に向かって10代や20代の主に男性が最後の抵抗の手段として短いナイフを持って刺しに行くという事件が数カ月おきに起きています。車両で突っ込むような事件もあります。その度に、イスラエルの占領に対する怒りが湧き上がるのですが、それは日常的に起こるので、無くなることは決してないんですよね。占領が続いてパレスチナ人に対する強い人権侵害が行われている限り、そういった事件が起こり続けるということを私たちも住んでいてすごく分かります。現地に駐在しているジャーナリストの人たちも、「いつ緊張がワッと盛り上がるのかはなかなか予想がつかない」と。沸騰した鍋に蓋が閉まっているような状態で、いつそれが噴き出してもおかしくないというのが毎日の日常ですね。

:あの発言の後は各地でデモや衝突などで一時非常に緊張が高まり、ガザにはイスラエルからの空爆もあり。発言直後の混乱期というのはどのような状況だったんですか?

山村:(トランプ大統領の発言があった4日後には日本に帰国していて)実際に現地にいたわけではないのですが、ガザではずっと停電も続いていたので人々の絶望感も強くて。高い失業率に加えて、一日に数時間の電力しか供給されないという状況で、社会にいつにも増して閉塞感がありました。また、貧困も非常に進んでいましたので、街に前にいなかったような物乞いの子どもたちが現れたり、親も子どもを育てていくのが貧困がひどいので大変になって子どもを家から追い出し「物乞いでお金を稼いでくるまで帰ってくるな」と子どもに言う親もいたり。

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