北朝鮮の生活水準はベトナム、インド並み? 当局者が自ら公表、1人当たりGDPは904ドル

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北朝鮮経済に詳しい、環日本海経済研究所(新潟市)の三村光弘調査研究部長は、1人当たりGDPについて「904ドルという数字は、実際より高めの数字ではないだろうか。1000ドル近い1人当たりGDPなら、1500ドル程度のベトナムやインドよりも、少し遅れているレベルになる。平壌だけを見ると2000~3000ドル程度と言っても差し支えないが、地方との落差を考えながら総合的に考えてみると500~700ドルレベルでは」と推測する。

発電能力についても、「李教授が紹介した発電能力と発電量が実際にどのような定義で言われたのかがわからないが、発電設備能力で750万キロワットがあり、実際に503万キロワット発電できれば、状況はかなり改善したほうだろう」と言う。また、穀物生産量でも、「前年比16万トン増は、まずは納得できる数字。国家から買い上げるコメの価格も、通常より10(北朝鮮)ウォンプラスされたという情報もある。農民たちのインセンティブを高める施策が広がっており、実際に農村地域では肥料の生産、地力向上に熱心に取り組む農民たちが増えているようだ」と紹介する。

国際比較が可能なデータ作成に乗り出した北朝鮮

三村氏は、「北朝鮮は国際的比較ができるようにデータの作成作業に向けて動いているようだ。だが、国連統計委員会で採択され、世界中で同一基準に基づいたデータとなるSNA(国民経済計算)を導入するのか、また国営部門、非国営部門などどこまで自国の経済データを収集・分析できるかは不透明だ」と指摘する。

韓国で発表される北朝鮮の統計データは、おおよそ以下のような流れを持つ。まず、情報機関である国家情報院が北朝鮮と関連する基礎情報を収集・分析し、それを韓国国内の北朝鮮統計作成機関に提供する。提供を受けた各機関は、その情報を利用して自分たちが持つ情報やデータの加工方法などをつかって北朝鮮の統計をはじき出す。これら機関には、国家情報院や韓国銀行、統一省、外交省、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)などがあり、関連データを発表している。

また、韓国の機関以外でも国連や国連食糧農業機関(FAO)や国際エネルギー機関(IEA)、米中央情報部(CIA)、世界銀行なども、北朝鮮の関連統計を発表している。

実は、李教授は昨年も、平壌で東洋経済など日本人ジャーナリストと懇談を行った場で、「1人当たりGDPで1980年代の最高水準である2350ドルを超えるのが当面の目標」と述べ、まだその水準には及ばないと回答している。ただ、「詳細なデータは発表できないが、それは米国と対決状態にあるため」と発言していた。

「週刊東洋経済」10月7日発売号では、北朝鮮特集~「金正恩の経済学-開放路線に未来はあるか」を掲載予定です。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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