受け身、言い訳、小出しでは世界に通用しない--『国家の命運』を書いた薮中三十二氏(外務省顧問)に聞く
日本の「国益」を背負う外交の現場とはどういうものなのか。20年以上にわたり、首席交渉官を務めた経験から、時のテーマにどう取り組むべきか、針路を提示する。
──薮中さんというと、北朝鮮核問題の6カ国協議での印象が強いのですが。
20年以上にわたり外務省の首席交渉官の職にあった。この間、日米構造協議をはじめ経済交渉はすべて手掛けた。ここ十数年は近隣諸国との海洋問題に関する交渉が多かった。それに経済連携関連。TPP(環太平洋経済連携協定)については、この春ごろには早めに取り組んだほうがいいと指示していた。FTA(自由貿易協定)は、TPPだけの問題ではない。むしろ日本とEUをまとめられるかどうかのほうが、より直接的な影響のある問題だ。
──20年ぶり2作目の著書がベストセラーになっていますが、前作でも「アメリカ離れのすすめ」が話題でした。
初めての著書『対米経済交渉 摩擦の実像』は各紙誌に書評が載ったものの、ぜんぜん売れなかった。交渉の全体像をきちんと書いたが、当時は『「NO」と言える日本』が100万部を超える売れ行きだった。
「アメリカ離れ」とは、「乳離れ」のつもり。つまり、「『NO』と言える日本」も「『NO』と言えない日本」も、返事は違うにしても、しょせん相手待ち。相手の要求を待ってから答えるという点は同じだ。アメリカから何か言われてから対応を考えるのではなく、まず自ら考えよという意味を込めた。
──相手待ちという点は今も変わりがない?
私はそうしてこなかったが、往々にしてそのままだ。「受け身の姿勢」に加え、「言い訳の姿勢」「小出しの姿勢」にも変わりがない。相手に注文をつけることにはほとんど関心がなく、要求に折り合いをつけることにひたすら労力を費やす。