受け身、言い訳、小出しでは世界に通用しない--『国家の命運』を書いた薮中三十二氏(外務省顧問)に聞く

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 そのうえで、FTAに対する障壁になっているシステムをなくすことだ。たとえば小麦は高い関税をかけたり、複雑な輸入制度にしたりしているのに、国産は10%しかない。これをすっきりさせる。必要な農業の保護は戸別所得保障ですればいい。

──ところで、「手ごわい」北朝鮮とはどう付き合うべきですか。

交渉相手としてはやりにくい。それはペースを北朝鮮が自ら設定できるからだ。世論は関係ない。ちょっとした動きが示されると、動いたぞと諸国が関心を示す。そういう国との交渉はなかなか難しい。だからこそ、周りの国々で一致団結して政策調整をして働きかけるしかない。中国もエネルギーと食料という生命線を握っているわけだから。日本だけですぐにできる名案はない。

──菅首相がウルトラCとして北朝鮮訪問を考えていて、その密使が薮中さんという説も。

それはない。北朝鮮は政権の移行期に入っている。スムーズな移行があるのかどうか、中国も心配をしている。その中で、核廃棄をさせ、同時に拉致問題を解決させる。辛抱強くやっていくしかない。

(聞き手:塚田紀史 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年11月27日号)

やぶなか・みとじ
1948年大阪府生まれ。大阪大学法学部中退、外務省入省。北米局課長時代に日米構造協議を担当。アジア大洋州局長として6カ国協議の日本代表を務め、北朝鮮の核や拉致問題の交渉に当たる。サミットのシェルパ(首脳の補佐役)、経済・政治担当外務審議官などを経て、外務事務次官。2010年に退任。

『国家の命運』 新潮新書 714円 188ページ

  

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