「横浜傾きマンション」、泥沼法廷闘争の行方 建て替え関連費用460億円をめぐって泥仕合
ところが、3棟の安全性や資産価値下落を懸念する声に押された三井不動産レジデンシャルが、2015年10月に全棟建て替えを住民に提案。翌2016年9月に住民らが集会にて全棟建替えを決議した。
三井住友建設はかねて住民説明会にて「傾斜が確認された棟を含め、大地震が起きても倒壊のおそれはない」と説明していた。たとえ一部の杭が支持層に達していなくとも、マンション自体の耐震性に問題はないとした。そうした中で降って湧いた全棟建て替え。販売会社の三井不動産レジデンシャルと施工会社の三井住友建設らとの亀裂はここから生まれた。
建て替えは本当に必要だったのか
協議は平行線をたどり、とうとう2017年11月28日、「意見の相違が明らかになった」(三井不動産レジデンシャル)ことから、同社がマンション4棟の建て替え費用の支払いを求めて、東京地方裁判所に訴えを起こした。訴状によれば、同社は建て替えに伴う費用約460億円及びその金利負担を三井住友建設、日立ハイテクノロジーズ、旭化成建材に請求している。
争点となりそうなのは、やはり全棟建て替えの必要性だ。三井住友建設は安全性に問題はないと再三主張している。「解体工事業者からも『よくできているマンションですね』と褒められたくらいだ」(三井住友建設幹部)。
傾斜マンションの安全性についての第三者評価機関である一般社団法人建築研究振興協会も「(施工不良が確認された)8本の杭以外は必要な深さまで打たれており、安全限界耐力(マンションが地震に耐えうる力)についても満足する結果」とお墨付きを与えている。施工品質で争うのは、一見スジが悪そうだ。
そこで三井不動産レジデンシャルが持ち出したのが、過去に施工不良マンションについて争われた裁判だ。竣工後にひび割れや手すりのたわみ、配水管の亀裂などが生じたマンションについて、最高裁判所は2007年7月6日、「建物の建築に携わる施工者は、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う」と判示した。
倒壊など重大な事故つながる可能性がなくとも、手すりの施工不良によって住人が転落する危険があれば、その建物は「基本的な安全性」を欠いている、という理屈だ。訴状にもこの判例が引用されており、マンションの基本的な安全性について争うと見られる。
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