若手への説教に「流行」を取り入れてはダメだ

上司が部下に「たとえ話」をする際の注意点

しかし、ここにある落とし穴は、ネットは基本的には自分で検索して目的の情報にたどりつくメディアであるということです。オッサンは、オッサンが関心のあるものを検索してオッサンのネット世界を作り出します。オッサンの検索データから情報を得たAIなどからレコメンドされてくるものは、すべて自分になじみ深いオッサン世界のものです。ネットはもちろん無限に広がる世界ですが、下手するとオッサン達が独力でたどりつけるのはオッサン色の強い、オッサンには心地良い世界だけということにもなりかねません。せっかく若者文化を知ろうとしているのに、そうさせてくれないのが切ないことですね。

その結果、長い道のりを経て、ようやくオッサンにまでたどりついた若者文化は「ちょっと前」のものであることが多くなります。東大生に就職一番人気の企業は既に成熟した下り坂企業であるとか、田舎の女子高生まで到達したファッションは既にダサいとか言われるのと似たような感じで、オッサンにまで到達したちょっと前の若者文化は、実は若者から見て一番カッコ悪いものです。

なぜならば、ちょっと前に流行ったもの、すなわち今は流行っていないすぐ消えたものは、結局は一過性のものであり普遍的価値を獲得できなかった敗北者だからです。それをわからずに、「これは最新の若者文化だ」と誤解して、意気揚々とたとえ話に使ってみれば、もちろんそれは逆効果です。努力は認めてくれるかもしれませんが、若者からすれば、「もう飽きられたものだよ」「無理しちゃってカッコ悪い……」「すり寄ってきている」「日和っている」ともの見えてしまうかもしれません。これでは若者からリスペクトを勝ちえて、動かすことなど難しいことでしょう。

歴史的スターは、普遍的な価値を持っている

では、どうすれば良いのか。それは、若者にとっても、オッサン世代にとっても、等距離にあるものを利用すれば良いのです。それは「歴史」です。若者とオッサン世代の年齢差は大きいとは言ってもたかだか10~20年でしょう。ところが、例えば、織田信長の生きていた時代と今との間は400年以上。若者と織田信長の差と、オッサンと織田信長の差は、誤差の範囲です。織田信長という存在は、若者とオッサンにとってはほぼ等距離、共通の常識と言って良いでしょう。

他にもカエサルやらナポレオン、ブッダにキリスト、スーパースターは歴史の中にいくらでもいます。彼ら英雄を、何かのたとえ話で使ったとして、「古い」と非難されるでしょうか。いや、もちろん古いのですが、上述の「ちょっと間で消えた価値の低いもの」とは真逆で、その古さは、普遍的な価値を持つために極めて長い時間を経ても今に残ったというカッコいい古さです。このように、我々オッサン達は下手に流行を追うよりも、歴史を学びなおし、それによって若者とコミュニケーションを取るほうが自分の身の丈にも合い、かつ彼らのリスペクトも勝ちうることのできる良い方法ではないでしょうか。

文:曽和利光/株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長

1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
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