自衛隊撤退後の南スーダンで起きていること 避難民「家に戻ったらまた襲撃されるかも」
堀:それだけに、そうした現地の情報がしっかり入手されて、国民にも知らされるべきだったということでしょうか。
今井:そうですね。南スーダンは2013年以降、私どものような人道支援団体も含めて、研究を続けているような学者の方も入りづらいんですよ。日本政府が渡航規制をかけて、なるべく入れないようにしていて、こうした生の情報が限られているんですね。ジャーナリストの方も報道各社も自粛していたということもありました。その背景には何らかの政府からの圧力があったのかなど、そうしたことは私はわかりませんが、現地からの正しい情報が日本の皆さんに届いていない状況にはなっていましたね。
「軍隊」ではなく「文民」ができる支援の形
堀:子どもたちの教育環境や居住環境もそうですし、具体的にはどのようなサポートが今必要なのでしょうか。
今井:南スーダン全体で言えば、食糧の問題があり、国連や赤十字、国際NGOも活動をしています。その他、医療もそうですし、例えばテントのような住居など、さまざまなものが必要です。そうした中、子どもたちの教育支援が後回しになってしまいます。どうしても食べる方が先に来るので、私たちはジュバで活動する中で、最初は食料支援から始めたのですが、今は子どもの教育に軸を移し避難民キャンプの子どもたちの学用品の支援を始めています。ノートやペンを買わないと学校に行っても勉強ができない、もしくはそうしたものを持っていないから学校に行きたくない、そういう子が多いので学用品の支援を行っています。
堀:自衛隊の撤退以降は現地の状況に関する報道も下火になっていきましたよね。支援活動を続ける一人としてはどんな思いでその状況を見ていますか?
今井:残念でもあり、ある意味日本の報道のあり方が恥ずかしいというのはありますよね。国際ニュースでは南スーダンの現状がもっと伝えられていますから。国連も言っていますが、今の国際情勢の中ではシリア・イエメンと並んで最も深刻な人道危機と言われており、報道もされています。日本の国内を見ると、南スーダンの報道がなくなってしまう。もともと日本の報道は南スーダンの状況を伝えるということよりも、稲田防衛大臣の動向や国会の論戦が中心だった訳ですので、内向きなところで国民の視線も作られてしまったと思います。現地目線で状況を知ってほしいという思いもありますし、報道も続けてほしいと思いますよね。
堀:アフリカ地域といえば中国の影響が色濃く現れているなど日本の外交にとっても重要な現場だと思うのですが、日本政府は南スーダンの問題には今後どのように関わるべきだと思いますか?
今井:日本は自衛隊のような「軍隊」ではなくて、「文民」と言いますが、軍人ではないさまざまな専門家、法律や人権、教育の専門家を送ってこの国が安定するようなことに貢献してほしいですよね。日本政府は今まで日本人を入れないようにする方向でしたが、これからはそうした平和づくりをする人々の派遣をするべきだと思います。
堀:確かに、「PKO=自衛隊派遣」という印象が強いですが、本来のPKO活動の中にはさまざまな多岐にわたる活動がある訳ですから今井さんのいう文民の派遣は一つの有り様ですよね。引き続き現地の状況など教えてください。ありがとうございました。
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