自衛隊撤退後の南スーダンで起きていること 避難民「家に戻ったらまた襲撃されるかも」
今井:新聞など一般の報道では「民族対立」と言われていますが、実際に現地の友人などから聞いた話では、「民族対立というのは紛争の原因というよりも結果だ」と言っていました。私はこの対立は、「政府の中のグループ同士の利権争い」だと思います。この国ではもともと石油が取れますし、援助も含めこの国にはさまざまなお金が国に入ってきます。それらを巡って、政治家同士が利権の取り合いをし、いくつかのグループに分かれて政治闘争をしてきたのですが、そのグループ同士の対立が深まり衝突をしてしまったと。そのグループというのは比較的表面上民族別に分かれていました。しかし、必ずしも同じ民族同士というわけでもないんです。別のグループにその民族出身者が入っていたりと入り組んだ状況でもあったのですが、大まかには民族別に分かれていて、戦闘が始まると民族同士の対立感情がますますエスカレートしていくという結果になり、単に民族が違うからと襲撃して殺し合うという事態も起きたりしたんです。
堀:首都のジュバやその近郊では高い緊張が続く中、今井さんは現地での支援活動にも入られていましたよね。
今井:私は安全上のこともあって首都ジュバにしかいないのですが、ジュバの中でも人々が非常に恐れていましたよね。政府の中でちょっとした内部抗争があって事件が起きると、住民の方で逃げられる方は逃げたり、街中では扉が閉められ人っ子一人いなくなったりしました。民族虐殺のような事態になって、いつ自分が殺されるかわからないという不安を抱えていますね。
堀:今井さんご自身もヒヤリとする経験はありましたか?
今井:虐殺が目の前で行われることはありませんでしたが、私が首都ジュバに滞在している期間も毎日のように強盗団による被害がありましたし、稀に銃声を聞くこともありました。現地の人と一緒に支援活動をやっていますが、その方の家に強盗団がきたとか、家の近くの路地で激しい銃撃があったという話はよくしていますよね。
400万人が未だに避難生活
堀:現状は停戦の合意がなされて落ち着いている状況だと今井さんが仰っていましたが、とはいっても支援も必要なくなったという訳ではありませんよね。
今井:ある程度戦闘が収まったといっても、いつまた起こるかは分かりませんし、避難しているみなさんは家に帰れないんですよね。今、国民の3人に1人、1200万人の人口の国でその内の400万人程が国内や国外で避難生活を続けています。その方々の数はほとんど変わっていない、つまり家に帰れていないんですよね。もし自分たちが家に戻ったらまた襲撃されるかもしれないという不安もあります。支援が必要な状況は全く変わっていないですね。