「つみたてNISA」が盛り上がらない根本理由 金融機関の大半がほとんど「売る気なし」
問題は、毎月分配型投資信託を解約した後、そのおカネがどこに流れているのか、ということです。もちろん、「つみたてNISAで長期・分散・積立投資をしましょう」というアドバイスなどしているはずもなく、インド株や、ロボティクス、AIなど、特定のテーマに投資する「テーマ型ファンド」を解約資金の受け皿にしていると思われます。
テーマ型ファンドの多くは年1~2回決算です。要するに既存金融機関の多くは、「毎月分配型投資信託は、金融庁が目の敵にしているからもう積極的に販売しない。でも、年1回決算の投資信託なら、何を売ってもいいでしょう」といわば開き直っているわけです。これも金融庁に対する金融機関の「面従腹背」を絵に描いたような構図です。
もし、毎月分配型投資信託の販売促進をやめて、年1回決算の投資信託に営業の中心をシフトさせたとしても、それは決して褒められるようなものではありません。なぜなら、毎月分配型投資信託を全額解約させ、結局は、それで生じた多額の解約資金をひとまとめにして、特定のテーマ型ファンド等に資金を移し替えさせようとしているからです。販売金融機関にとってはまたぞろ購入手数料が稼げて、目先の収益は上がります。しかしこの手の販売方法が横行しているかぎり、いつまで経っても、つみたてNISAの理念は定着しません。
正直なことを言えば、つみたてNISAは、2014年に始まり、ブームとなった「NISA」のときのような盛り上がりはないでしょうし、投資信託会社にとっても、また販売金融機関にとっても、その成果を実感するまでには、かなりの時間を要すると思います。
口座数と積立金額が増えたときの起爆力は強力だ
でも、つみたてNISAに真剣に取り組まない金融機関は、早晩、淘汰の対象になると思います。現在、個人金融資産の大半は60歳以上の高齢者に偏在しています。この人たちはいずれ、自分自身が満足に動けなくなったとき、これまで自分が築いた金融資産を取り崩し、生活費に充てるようになるはずです。結果、既存金融機関の顧客に占める最大のボリュームゾーンが、徐々に崩れていきます。
そうなったとき、自分たちの将来のために資産形成をしている若年層の顧客を持たない金融機関は、経営が成り立たなくなる現実に直面するはずです。特に今後、地方銀行はつみたてNISAに対する取り組みの真剣度合いが、同業他社を呑み込む側になれるのか、呑み込まれる側になるのかを左右する、重要な試金石になるでしょう。
つみたてNISAの積立限度額は、年間40万円、20年の積立期間で最大800万円であり、1口座あたりの資金量は決して大きくありません。しかし、数万口座、数十万口座というように、口座数と積立金額が増えたときの起爆力は、業界の勢力地図を塗り替えるほど強力なものなのです。その点を忘れるべきではないと思います。
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