米国の「死体実習」、舞台は高級ホテル宴会場 ボディーブローカーから入手した死体を使用
ホテルやセミナー主催者によると、清掃を行うのは実習技術者のみで、医療廃棄物はバイオハザード会社を通じて廃棄される。だが間違いが起こることもある。
「(鼻形成術のセミナーの後で)血が付いた布やビニールが入ったごみ箱が会場に残され、回収されなかったことがあった」と、シェラトン・グランド・シカゴのイベント担当者バンス・ファットーレ氏は明かす。ホテル職員がゴミ箱の周辺に規制線を引いて立ち入り禁止にし、セミナー主催者に電話して回収してもらったという。封がされたゴミ箱の中には、注射器も入っていた。
こんなことが起きていても、このホテルではこの先1月と3月の2回、死体実習を予定している。「われわれは、なにより顧客に奉仕するためにいるのだ」と、ファットーレ氏は言った。
倫理の問題
ホテルやその会議場で行われる死体実習には、死者の尊厳をどう守るかという懸念もついて回る。
「こうしたセミナーがホテルで行われること自体、全く受け入れ難い」と、ボストン・チルドレンズ・ホスピタルのサビーヌ・ヒルデブラント医師は言う。
このようなセミナーを体験をすることで、ベテラン医師ですら、人体は生死にかかわらず尊厳を持って扱わなければならないという感覚を鈍らせるのではないか、と同医師は懸念する。
セミナーが開催される場所自体も問題だ。大人から子どもまで、ホテル利用者が予期せず衝撃的な光景を目にしてしまう可能性がある。
ロイターが取材した各ホテルは、利用者から苦情を受けたことはないと述べた。セミナー主催者も、死体を使う部屋へのアクセスは制限していると話す。
だが、その程度にはばらつきがある。
ディズニーのホテルで行われた11月のセミナーで会議を取材していたロイター記者は、入場は許されていないと告げられるまで、2件の実習を見学することができた。
ラスベガスにある高級ホテル、ウィンラスベガスの宴会場で6月に開かれた形成外科会議では、手術実習の開始後ドアが開かれたままだった。記者は外のホールから、覆われていない人間の胴体を目撃した。
ウィンラスベガスは、主催者側が実習のために会議場全体を貸し切っていたと語る。同ホテルグループのマーケティング担当マイケル・ウィーバー氏は声明で、「会議参加者以外が会場にいることは、全く想定外だった。医療訓練のイベントが開かれている会議室は、一般客は立ち入り禁止にしている」と説明した。
(Elizabeth Culliford 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら