死体が存在した「事故物件」をどう見分けるか 座間「切断遺体」現場となったアパートの運命
事件が起きたアパートは今後どうなる?
神奈川県座間市のアパートで9人の切断遺体が見つかった事件は、そのあまりにも猟奇的な内容もあって、世間に衝撃を与えた。現場となったアパートは繰り返しテレビに映し出され、場所もグーグルマップを使えば簡単に住所まで特定できる。オーナーとしては、なんとも痛恨の事件だろう。ここで1つ疑問が浮かぶ。こうした凄惨(せいさん)な事件が起きたアパートは、今後どうなるのかということだ。
本稿では、もし自分が所有する不動産がいわゆる「事故物件」になってしまった場合にどうしたらよいか。また、借りる側の立場から、事故物件を借りたり買ったりしないためにはどうしたらよいか、考えてみたいと思う。
不動産の賃貸や売買は、瞬時に大量の売買が行われる株式取引などと異なり、そのときに現れた借り手・買い手と、貸し手・売り手との個別交渉による相対取引だ。そのため、事故物件の相場ははっきりしないが、あくまで一般論としていえば「殺人」や「自殺」が発生したいわゆる「事故物件」の場合、賃料・売買価格ともに20〜30パーセント下がるのが相場である。
とりわけ、今回の事件のように、全国規模で大々的に報道され社会に知れ渡った部屋の場合は、半値かそれ以下になることもある。しかし、事件のあった部屋以外は、告知義務はない。したがって事実上の影響はともかく、原則として賃料・売買価格に影響はないだろう。
そもそも「事故物件」については不動産業界に明確な定義があるわけではなく、賃貸・売買の現場では、過去の判例に基づき、まちまちの運用をしているというのが実態だ。民法にも宅地建物取引業法にも事故物件の定義はなく「●年間告知せよと」といった縛りもない。ゆえに過去の裁判では、いわゆる「心理的瑕疵(かし)」の有無や程度について、事故の重大性や経過年数、買い主や借り主の使用目的、近隣住民に記憶が残っているかどうかなどを総合的に考慮し、事故の有無や損害の程度について個別に判決が下されてきた。
判例によれば、事故物件の扱いは賃貸と売買で異なるし、都市部と農村部でも異なる。たとえば、賃貸における事故物件の場合、次の借り主に対しては告知義務があるが、その次の借り手には告知する義務はないとした判例がある。これを悪用し、事故物件にいったん社員やアルバイトを住まわせすぐに退去させ、次は告知義務なしとして市場で流通させる不動産業者もいるようだ。知らぬ間に事故物件に住むことになってしまった人は、たまったものではない。
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