中国バブル崩壊の場合、日本への影響は? リーマンショックを上回るほど、生産が激減する?

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中国現地活動は2割程度のウエート

日本経済への影響は、輸出を通じたものだけではない。もう一つの問題は、中国に進出している日本企業の活動に影響があることだ。

日本企業の中国での活動がどの程度のウエートを持つかは、経済産業省の「海外事業活動基本調査」で見ることができる。それによると、11年度において、海外現地法人数は1万9250で、売上高は約182兆円(うち製造業は88兆円)である。そのうち、中国は現地法人数が5878で売上高が約35兆円(うち製造業は21兆円)だ。したがって、海外現地法人中の中国の比重は、現地法人数で3割、売上高で2割ということになる。本社企業の売上高は343兆円(うち製造業が187兆円)であるから、海外進出している企業に限っていえば、売上高で見て中国の比重は本国の1割ということになる。

この比率は、もちろん業種によって異なる。中国での経済活動はどちらかと言えば製造業にウエートがある。進出の形態はさまざまなので、影響もそれによって異なるだろう。また、企業によっても異なる。

中国のウエートが比較的高いと言われる日産自動車を見ると、12年度のグローバル販売台数は491万であった。内訳は、日本国内が64.7万、中国が118万、米国が113万だった。このように、中国のウエートは米国より高く、国内の2倍近くになっている。

中国の経済が混乱すれば、中国での企業活動は直接に影響を受けるだろう。かなりの影響があることは、12年9月の尖閣諸島国有化による日中関係悪化で日本車離れが進んだ状況を見ると、明らかだ。売り上げが減るだけでなく、労働争議などもありうるだろう。日本全体で見ると、国際収支の所得収支が影響を受ける。

ここでの基本的な問題は、「中国に留まるべきか?それとも、中国を捨てて、他の地域(とくにASEAN)に移転するか?」ということである。

この選択は、容易ではない。製造業の場合、サプライチェーンが整備されているか、現場で指揮をとりうる中堅技術者が存在するか、等々の条件に依存する(拙著『日本式モノづくりの敗戦』、12年、東洋経済新報社を参照)。また、「ルイスの転換点に代表される中長期的な中国経済の構造変化は本質的なものなのか?」という問題もある。そうした判断条件の中で、「不良債権問題は短期的に克服しうる問題なのか」は重要な位置を占める。

週刊東洋経済2013年9月28日号

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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