世界で突出、邦銀の「石炭火力発電」向け融資 欧米勢が投資撤退に動く中で真逆の動き

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しかし、「ダイベストメント(投資撤退)」と呼ばれる化石燃料関連資産の売却の動きは、パリ協定採択以降、加速しつつある。

こうした中で、NGOによるデータベース構築やランキング公表が重要な意味を持つのは、「今までリストに含まれていなかった石炭火力発電を営む大手企業がダイベストメントの候補先に新たに加わったことにある」(環境NGO「『環境・持続社会』研究センター」の田辺有輝プログラムコーディネーター)。

田辺氏によれば、これまでにも欧米の大手機関投資家や金融機関は「石炭採掘大手100社」や「石炭関連ビジネスへの依存度が30%以上の企業リスト」などを基にダイベストメント対象を選定してきたが、「大手の電力会社などはこれらのリストに含まれていないことが多かった」(田辺氏)。

今回、大手電力会社を含めた「石炭火力発電に関する大手120社」のリストが新たに作成されたことにより、日本の大手電力会社もダイベストメントの嵐にさらされる可能性が高くなっているという。

アクサが撤退候補選定にリストを活用

パリで気候変動サミットが開催された12月12日、フランスの大手保険会社アクサは、ウルゲバルトが作成した"Global Coal Exit List”(https://coalexit.org/)に基づいて石炭火力発電や石炭採掘を営む企業を選び出し、ダイベストメントに踏み切る考えを表明した。ダイベストメントの動きに詳しい前出の田辺氏によれば、丸紅やJ-POWERなどがその候補に該当する可能性が高いという。

なお、みずほ、三菱UFJは気候変動など環境問題への取り組み姿勢を強調する一方、石炭火力発電事業を営む大手企業向け融資ランキングで首位および第2位になったことへの受け止めについてノーコメントとし、石炭火力発電への投融資方針についても明らかにしていない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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