「石炭火力」偏重が日本に負の影響を与える ESG投資で注目、「環境情報開示」創始者が警鐘

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CDPのポール・ディッキンソン・エグゼクティブチェアマン。日本企業の取り組みには一定の評価を与えている(撮影:今井康一)
短期的な収益の追求ではなく、環境や社会、ガバナンスに対する企業の取り組みを評価基準に据えた「ESG投資」が世界的な規模で拡大している。
ESG投資の基礎となる「国連責任投資原則」(PRI、Principles for Responsible Investment)は、国際連合のコフィー・アナン事務総長(当時)によって2006年に提唱された。現在では、1700を超える年金基金や資産運用会社などがPRIに賛同署名し、投資決定にESGを組み込むことを公約している。日本でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年に署名して以来、ESG投資に対する関心が急速に高まっている。
ESG投資では、地球温暖化対策など環境にかかわる情報の開示が欠かせない。そこで大きな役割を果たしているのが、英国のNGO(非政府組織)であるCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)だ。CDPは、世界規模で事業を展開する企業に、環境関連の情報開示を要請。現在、2000社を上回る大手企業がCDPが作成した調査票に基づいて環境関連の情報を開示している。CDPでは、経営陣による取り組みへの関与や目標設定の合理性などの内容を精査したうえで、AからD-(マイナス)までの8段階にスコアリングし、その結果を公表している。
CDPの気候変動分野における取り組みには、運用資産総額で約100兆ドル、800を上回る機関投資家が賛同署名している。CDPから高評価を得ることが、機関投資家によるESG投資の対象銘柄に組み入れられることにつながる。そのため、企業の経営者の関心が年々高まっている。
このたび東洋経済では、10月下旬に来日したCDPの創設メンバーの1人であるポール・ディッキンソン・エグゼクティブチェアマンに単独インタビューし、CDPの取り組みの成果や日本企業の情報開示の現状、課題について聞いた。

CDPへの開示、大手企業の取り組みは前進

――世界の大手企業による気候変動、水利用などに関する情報開示はどの程度進んでいるか。

二酸化炭素の排出抑制など脱炭素化への取り組みという観点では、あらゆる場面で非常に大きな進歩が見られている。CDPに情報を開示した企業を見てみると、現在、約9割の企業が温室効果ガスについて何らかの削減目標を掲げている。そのうち約20%の企業は2030年時点での具体的な削減目標を設定している。

2015年に合意されたパリ協定では、2050年までに全世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑えることが決まった。そのために必要な企業による温室効果ガス削減努力も、この1年で大きく進捗した。2016年時点では、必要な温室効果ガス削減の目標に対してのカバー率が25%だったが、2017年には31%に高まった。

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