「石炭火力」偏重が日本に負の影響を与える ESG投資で注目、「環境情報開示」創始者が警鐘

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――温室効果ガス削減の取り組みを後押しするために、情報開示要請のほかにどのような取り組みをしてきたか。

SBT(Science Based Targets、科学的根拠に基づく削減目標)認定の取り組みがある。CDPは国連グローバル・コンパクトなどとともにSBTイニシアティブの設立や事務局の運営にかかわっており、科学的に「2℃目標」と整合的な取り組みをSBTとして認定している。SBTに認定されると、CDPのスコアリングも加点される仕組みだ。

SBT認定を取得した企業は年々増えており、すでに300を超す企業が認定取得または2年以内での認定取得目標を掲げている。日本企業でも、第一三共や電通、富士通、川崎汽船など12社がSBT認定を取得。目標を掲げている企業を含めると39社に上っている。

2℃目標と整合的な科学的根拠に基づく温室効果ガスの削減目標を設定し、それを達成しようと努力することは、企業活動にとって必要な最低限の要件だと思う。現在ではまだ道徳的に求められているレベルかもしれないが、遠くない将来、法的に義務づけられる可能性もある。その意味でもSBT認定取得が必須の方向になってほしい。

2018年から質問内容を大幅改訂

ポール・ディッキンソン(Paul Dickinson)/2000年に英国のNGOであるCarbon Disclosure Project(現CDP)を創設。現在、エグゼクティブ・チェアマンを務める。持続可能な製品マーケティングの概念を提唱した「Beautiful Corporation」などの著作を持つ

――再生可能エネルギーの利用促進にどのように取り組んでいるか。

CDPは、企業活動に必要な電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目的とした「RE100」の活動にもかかわっている。この活動には現在、100社強がコミットしている。日本企業ではリコーと積水ハウスの2社が名前を連ねている。CDPのスコアリングでは、RE100のコミットを求めているわけではないが、再生可能エネルギーの利用目標を設定しているか否かでスコアに差が設けられている。

――最近の新たな取り組みとして、7月には気候変動が投資ファンドに与える影響についての評価も始めている。

EU(欧州連合)の基金によってパートナーに選ばれた。これにより、欧州にある約3000のファンドや投資信託について、気候変動に関して評価することになった。日本や米国でも資金を得ることができればやってみたい。

――G20(主要20カ国財務相・中央銀行総裁会議)の金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)は今年6月末に最終報告を公表した。これに基づき、欧州では、気候関連などESG情報の開示促進を含む総合的な政策ロードマップを年末までにまとめる動きがあるという。

TCFDの最終報告を踏まえて、CDPでも2018年から質問事項を大幅に見直す。つまり、将来を見据えての気候変動によるリスクや対処計画についても説明を求めていく。 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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