加熱式たばこ「iQOS」は、どう売り込まれたか きっかけはTV番組「アメトーク」だった
「That IQOS moment.」「My IQOS way of living.」これは同社のソーシャルメディア対策チームがオンライン上でのiQOSの露出頻度を上げるため、使用を検討していた2つのキャッチフレーズだ。これは「コンフィデンシャル(部外秘)」と記された2017年の同社の戦略資料に書かれている。ここでは日本での例が示されている。
これとは別の、2016年のソーシャルメディアチーム向けの54ページにわたるトレーニングハンドブックでは、ネット上への投稿は非常に危険な綱渡りになり得ると警告している。「たばこ会社がソーシャルメディアで製品を宣伝することは法律で禁じられており、iQOSはたばこを使った製品であることから、常に地雷に気を付けて歩く必要がある」。
一般の人の目にはつかないところでは、フィリップモリスの社員がiQOSに関する同社の科学的検証を説明した資料を持って、日本中の自治体政府を訪問していた。iQOSの税率をたばこより低くし、公共の場所や飲食店での喫煙禁止条例の対象からiQOSを外すよう働きかけていた。
東京都議会議員で弁護士の岡本光樹氏(都民ファーストの会)は、東京都が国とは別に制定を検討している受動喫煙防止条例の対象から、iQOSは外れる可能性が高いとみている。「個人的な考えとしては、法律家として、科学的に健康被害のエビデンス(証拠)がないものに関して罰則をかけるのは、抵抗がある」と同氏は話した。
イスラエル、突然の方向転換
これまでに公表されたiQOSに関する科学的な検証は、その多くがPMIによるものだ。複数の同社幹部は、この製品は、どうしても喫煙を止められない人に向けて作られたものだとしている。しかし同社がiQOSを発売した国・地域をみるとこの説明は整合性に欠ける。
PMIは、たばこの販売がすでに急減、言い換えれば禁煙する人が増えている国でiQOSを販売している。たばこの世界販売は、2005年から2016年の間に、1.9%減少した。一方iQOSが販売されている30カ国では、同30%の減少となっている。(ユーロモニター・インターナショナルの数字に基づくロイターの分析による)
PMIはiQOSが発売されている国には、1億8000万人以上の喫煙者がいるとし「この1億8000万人は、従来の紙巻きたばこより害の少ない可能性のある製品に移行するチャンスを与えられるべきだ」とコメントした。
科学的データで政府を説得して税率を下げるよう働きかけるという日本での戦略をさらに磨き、同社は新たな市場を席巻する準備を整えた。
イスラエルでiQOSを発売する半年以上前、PMIのRRP担当バイスプレジデントのモイラ・ギルクリスト氏は空路でイスラエルを訪れ、同社の科学的検証について説明するため、2016年3月に政府の保健省関係者と会った。
会合の数週間後、保健省のItamar Grotto氏は税務当局に書簡を送り、iQOSについて、新たなカテゴリーに入る製品であり、たばこにかかるマーケティングおよび広告規制の対象から除外される、との見解を示した。その後の裁判資料でPMIはこの書簡をiQOSのイスラエルでの販売を決めたことの説明として引用した。