爆進・エヌビディアは「三日天下」を招くのか

突然の利用制限に世界から大ブーイング

「早晩、グーグルが提供するクラウド型のAIコンピューティングサービスなどに乗り換えることになるだろう」。そう断言するのは、IT企業・バクフーの柏野雄太社長だ。

これまで同社はさくらインターネットのGPUシステムを利用してきた。「1日、2日で開発環境を移行できるようなものではなく、移行のコストはかかる。今回の規約変更はわれわれのような小規模な企業や研究組織にとってより負担が大きい。その意味でエヌビディアは非常にevil(邪悪)で、とても失望した」(柏野社長)。

グーグルは自社のクラウドサービスに、独自開発したTPU(テンサー・プロセッシング・ユニット)というAI用半導体を搭載している。従来はエヌビディアのGPUに依存してきたが、これを順次独自のTPUに切り替えているようだ。グーグルはTPUを外部販売こそしていないが、柏野社長のようにグーグルのAIサービスを利用する企業が増えれば、長期的にはエヌビディアのライバルになるといえる。

第2の選択肢を求める動きが加速する

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、AI用半導体での優位性を強調するが…(撮影:梅谷秀司)

ライバルはグーグルだけではない。半導体最大手のインテルは「FPGA」と呼ばれる半導体の開発生産を強化しており、AI用での出遅れを挽回しようとしている。AI用半導体ベンチャーの英グラフコアには、韓国サムスン電子や自動車部品大手の独ボッシュなどが出資している。

そもそも基幹部品が特定の1社からしか調達できないというのは、それを買い付ける企業にとっては非常にリスクの大きい状況だ。取引関係が足元で良好でも、リスク回避策として複数企業からの調達を目指すのが企業の常識である。

AI分野におけるエヌビディアの圧倒的に強い立場に顧客企業が満足していたわけでは決してなく、今回の規約変更を機に「第2の選択肢」を求める動きは加速度的に進むだろう。「AI用半導体ならエヌビディア」という地位は、ごく短期間の「三日天下」に終わりかねない。

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