中学高校生が「シンデレラ」を読むべき理由 ディズニーだけでは捉えきれない多層な世界
では、中学生・高校生にどうしたら本を読んでもらえるかと問われれば、ふつうに「本を読みなさい」と言っても、先述したように、まず何を読んでいいのかがわからないので難しい。そこで私が薦めたいのは、「本を読みなさい」と言う親御さん自身がまず本を読んでみることです。
ご自身が本を読んでいる姿を子どもに見せて、「この本のここが面白い」と熱っぽく語りかけてみる。思春期・反抗期でもあるので、表面上は素直に聞いてもらえないかもしれませんが、「伝える」という行為が大切です。子どもが中学生になると、よく家庭での会話がなくなると耳にしますが、その予防にもつながるのではないでしょうか。
また、反対意見もあるかもしれませんが、場合によっては「強制的」に本を与えることも大事ではないかと思います。たとえば、私が子どもの頃は家に「児童文学全集」というシリーズがありました。「少年少女文学全集」とか、各版元によって呼び方は違いますが、クラスメートのほとんどの家にもそうした全集があったものです。
この全集がよかったのは、こちらが忘れていようがいまいが、必ず月に1、2冊、それこそ「強制的」に家に届いたこと(笑)。自分だったら絶対に買わない本だけれども、届いた以上はせっかくだから読まなければならない。「面白くなさそうだな」と思ってパラパラめくってみたら、あにはからんや、あっという間にのめり込んだという経験は私だけではないはずです。そのように意外とはまることがある。最近は古書店で、二束三文で売られている全集が、実は読書する環境に適したものだったのですね。
さらに私の例で言うと、小学生のときは児童文学全集の『がんくつ王』が大好きでした。そして中学生になり、元本がアレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』という長篇(岩波文庫で7巻本)であることを知り、その世界にどっぷりと浸かります。すると小学生のときにはわからなかった物語の舞台がフランス革命後の激動期であったこと、皇帝ナポレオンが失脚してエルバ島に流されていたことなどを理解するようになり、今度は歴史へと興味が広がっていったのです。
なぜ「シンデレラ」なのか
私は最近、「別冊NHK100分de名著 読書の学校」というシリーズで『シンデレラ』を取り上げました。世界一有名なヒロインと言えば、シンデレラです。世界に似た話は500以上もあると言われ、日本でも誰もが知っている物語でしょう。
しかし、みなさんがご承知の「かわいい少女の夢物語」の『シンデレラ』は17世紀フランスの宮廷詩人ペローの、あるいはディズニーのアニメのヒロインの姿であって、知恵と勇気で困難を打開するグリム版シンデレラ、ましてや類話のなかで最古の文献とされる中国版の(纏足〈てんそく〉の可能性がある)シンデレラではありません。「物語はひとつではない」。それをみなさんに知ってほしかったのです。
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