「RIZIN」が3年目にブチ当たったカネ以上の壁 実行委員長の榊原には20年前がよみがえる
高田対誰か、ではなく、ヒクソン対誰か、でもなく、高田対ヒクソンだからこそ、カネは集まった。集めることができた。
「これはクロンに限った話じゃないんですが、いまのRIZINには、まだそういう熱望されるカードがないんです。クロン対誰か。那須川天心対誰か。RENA対誰か。これじゃ、爆発的な熱は生み出せないし、はっきり言うと、お金も集まらない。仮に集めたとしても、ペイできない」
むろん、そうしたカードを育てるために、榊原はプロモーターとして知恵の限りを尽くしている。だが、一つひとつの戦いに死を賭してしまうグレイシー一族に、そして戦いの舞台に飢えているわけではないクロンに、「いずれ大きな熱を生むために、こういう相手と戦ってくれ」という論理は通じない。
呼ぶか、呼ばないか。払うか、払わないか。
悩みに悩んだ末、榊原は後者を選択した。
だが、今年はともかく、クロンをRIZINのリングにあげることを諦めたわけでは、もちろんない。
クロンと釣り合う選手が出てきてほしい
「命を賭して戦う以上、ビッグマッチしかやりたくない、ビッグマネーでなければやりたくないというクロンの気持、ぼくにはよくわかるんです。だから、少しでも早く、ファンの中から『あいつをクロンとやらせろ!』と声が上がるような選手に出てきてほしい。それが矢地祐介なのか誰なのか。とにかく、名前が、存在が、価値が、クロンと釣り合う選手に出てきてほしい。そうすれば、たとえクロンが目の玉が飛び出るような額を要求してきたって、こちらは出しますよ」
クロンを再びRIZINに──榊原の願いが叶うときは、クロンとヒクソン、いまはこじれてしまった2人の親子関係が修復されるときかもしれない。
ヒクソンにとって、高田との一戦は生まれて初めて経験する「自分対誰か」ではない試合だった。東京ドームの花道を歩き、リングに上がる際に込み上げてきた胸の高まりは、百戦錬磨の男にとっても素晴らしく新鮮で、忘れ得ぬ経験だったという。
クロンには、まだその経験がない。
いつかライバルが現れ、ファンの予想が真っ二つに割れるような戦いが実現すれば、クロンは、誰かに助言を求める必要性を感じるかもしれない。
その求めに応えられるのは、もちろん、ヒクソン・グレイシーただ1人である。
(文中敬称略)
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