「人口32人」の集落に移住したドイツ人の気概 色鮮やかな古民家が消滅寸前の集落を救った
このほかに、レストランやショップとして生まれ変わる例も。たとえば、新潟県新潟市西蒲区にあるワイナリー「カーブドッチ」のレストランもベンクス氏の手によるもので、ここは県内屈指の人気観光スポットとしてにぎわうようになっている。
ベンクス氏の手で再生された古民家には大きな特徴がある。外観は柱や梁を格子状に組み合わせた骨格をあえてむき出しにして見せ、外壁は赤褐色のべんがら、ピンク、イエロー、グリーンなど色鮮やかに塗られる。屋根は手入れが大変な茅葺きに代わり、鉄片石と呼ばれるドイツの石の瓦が採用されることもある。横に縦に伸びる太い柱や梁は室内でもむき出しで、これは空間を広く感じさせ、家そのものが持つ力強さを印象づける効果があるという。
「お試し移住」も実施
寒さ対策や使いやすさも考慮されている。壁には断熱材を入れているほか、ヨーロッパ製の薪ストーブで部屋全体を暖める。キッチンやバス、トイレなど水回りは、デザイン性と機能性を兼ね備えたドイツ製のものも活用する。柱や梁、欄間など純日本的な古民家の部材と、カラフルな外壁、キッチン、ストーブなどドイツのものが違和感なく融和しているのは、ドイツと日本の建築を両方熟知したベンクス氏だからできることだろう。
ベンクス氏は古民家再生以外のことにも取り組んでいる。竹所を「古民家再生の里」とするため、休耕田を利用いてミズバショウを植え、古民家との統一感を出すため牛小屋の外壁を修復する活動を行った。「村全体を美しくデザインすることで、住む人も訪れる人も楽しい場所にできる。人が生き生きと住むことができれば、家や村は次の世代に受け継がれ、存続することができる」と考えているからだ。
ベンクス氏の活動は竹所の活性化だけにとどまらず、同集落を擁する十日町市とは、移住促進の一環としてシェアハウスによる「お試し移住」を実施。1973年に建てられた木造家屋を修復し、シェアハウスとして貸し出しており、入居者は最長3年間住むことができる。現在、定員6人のところ、20~40代、男女合計5人が共に暮らしている。ベンクス氏の建築に引かれたり、就職のために県外から来たりと移住理由はさまざまだ。
1人で一軒家に住むのは容易ではないが、シェアハウスであれば比較的安価に里山暮らしを始めることができる。また、夕食などを一緒に作って食べたり、掃除を分担したり、お互いに助け合いながら生活できるメリットもある。
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