こうしてみると2018年度予算案は、財政健全化の当面の目標を達成することができた内容、となっているといえる。それすら達成できないような歳出増圧力が政治的にはあっただけに、閣議決定した目安の達成、つまり決めたことは実現するという点では、まずは合格点といえるだろう。
ただ、財政健全化を重視する立場からは、「物足りない」との評価が早くも出ている。1兆円近くの増収が見込まれながら、基礎的財政収支は約4000億円しか改善できていない。社会保障費も5000億円の増加と、目安は達成できたものの、社会保障の個々の内容を見ると、もっと歳出抑制ができたのではないかという見方もある。
たとえば診療報酬改定では、薬価制度の抜本改革を実行することで薬価を抑制でき、マイナス1.36%となって、全体としては前回に引き続きマイナス改定とはなった。しかし、診療報酬本体(医師や看護師など医療従事者の人件費や医療機関の経費)が0.55%のアップとなり、結果として全体でのマイナス幅は1.19%にとどまった。医療従事者の給与や処遇の改善、医療機関の経営改善のためには、前回以上のプラス改定が必要、という医療関係者の要望が通った形だ。
また介護報酬では、0.54%のプラス改定となった。社会保障給付の重点化・効率化という点からは、介護報酬でもマイナス改定が必要なのだが、介護職員の処遇改善に重きを置く、政権の意向が反映されている。
さらに公共事業関係費は、ほぼ前年度と同額となった。歳出抑制の観点からは、公共事業費で減らす額を稼ぐことが必要だが、公共事業を強く要望する与党側の意向を反映した格好だ。
消費増税5兆円強の使い途はどうなる?
このように歳出予算は、大幅な増額というバラマキはないとはいえ、目安の達成以上には切り込まず、与党やその支持者に恩を売るような歳出増となったといえよう。
そのことは2018年度予算の先にも意味を持ってくる。
2018年末は、2019年10月に予定されている、「消費税率の10%への引き上げ」について、最終決断をする時期となるからだ。2019年度予算編成で消費増税を織り込むか否かが問われる。安倍首相は今年10月の衆議院総選挙後でも、「リーマン・ショック級の危機がない限り予定通り行う」と言っている。まだ予断を許さない。
しかし、外堀は、着々と埋められつつある。まず、12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」である。「新しい経済政策パッケージ」は衆議院選挙時、消費増税の使途変更で2兆円規模の歳出拡大を年内にまとめると公約したものを、具体的に取りまとめたものだ。そこには「2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げによる財源を活用する。消費税率の2%の引き上げにより5兆円強の税収となるが、この増収分を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、財政再建とに、それぞれ概ね半分ずつ充当する。」と明言している。
歳出拡大の分については、新たに生まれる1.7兆円程度を、幼児教育の無償化、待機児童の解消、保育士の処遇改善、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に充てるとした。そして「これらの政策は、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを前提として、実行することとする。」とくぎを刺した。予定通りの消費増税に拘束された内容だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら