成功例ゼロ「食品EC」に挑んだ男の非凡な嗅覚 インターネットと食で感じた可能性とは
――「食」というのは一番、人に密接に関わるものなんですが、それ以外のものは何か案として出たんですか?
やっぱりできるだけ、社会に影響を与えるところがいいなと思ったので、衣食住やヘルスケア分野などを見たんですけど、まず、食からリサーチを始めたら、結構問題だらけで、食べてる人は本当に食べてるものが安全かわかんないで食べてるし、作ってる人も一生懸命作ってるのに、全然儲からないっていうことがあったりとか、これは何か僕らの活躍の余地がありそうだなと思いました。
――当時、成功例など、何かお手本にするような事業者とかっていうのはありましたか?
そういう意味では、アマゾンとかが出てきて、ネットバブルがすごくアメリカで盛り上がっている頃で、いろんなeコマース業者があったんですが、食品eコマースに関しては、失敗事例しかなかったんですね。売り上げは上がるけど、利益はどんどん赤字が大きくなって潰れちゃう会社だらけで、その失敗事例しかない。成功事例がないっていうのはなんか、当時の自分たちにとっては、結構魅力的で、これでビジネスモデルに成り立たせることができれば、世界で初めて「食品eコマース」を成り立たせたっていうことができるな、というのがもうひとつのモチベーションになりましたね。
――不安はなかったんでしょうか?
何かを不安に思うみたいなことは、何もなくて、僕らが成功しようが失敗しようが、インターネットがなくてはならないものになることは間違いないと。ほとんど主婦の方は使ってなかったけども、でも、主婦の方もインターネットにいつか触れて、そういうふうな暮らしになるだろうと思ってましたので、上手くいくイメージしかなかったですね。
農家を訪問すると「帰ってくれ!」
――今となっては、野菜以外にも肉や魚、デザートなど、約4500品目を揃えているそうですが、当初は野菜を仕入れるのにもずいぶん苦労したのでは?
そうですね。売るのも全て大変だったんですけれども、買うのも大変で、私はモノはお金を出せば買えると思ってたんですね、実業をやったことがなかったから。ところが、農家さんのところにスーツを着て、お宅の有機野菜を買いたいんですけどって行くと、何言ってるかわからないから、帰ってくれと。インターネットとか意味がわからないと。新手の詐欺だろみたいな感じで、追い返される感じで、非常に買うまでは大変でした。