堀潤氏「NHKの強硬姿勢は損、まず改革が先だ」 「NHKは見ない、いらない」で本当にいいのか
CNNがなぜ世界中で見られるメディアになったのか。ひとつはディベートニュース局ということがある。オバマ政権のときには、ある時間帯では銃規制に賛成するキャスターが、反対する論客と議論している。またある時間帯では、反対派のキャスターが議論している。大統領選挙直前にはキャスター同士が集まってディベートをしたりする。これが面白い。NHKもキャスター同士が安倍晋三政権について真剣に議論する番組があったら、むちゃくちゃ面白いでしょ(笑)。視聴者も「こういうのを見たかったんだよ」と思うはず。
英BBCも世界に名だたる存在だ。彼らは約10年ごとに経営のあり方を見直すように決まっている。BBCはかつて、イラク戦争に加担したブレア政権から圧力があったといわれ、トップが解任されたことがある。これには視聴者から抗議が起きた。そこで信頼を回復するために経営委員を公募し、報道を監視する仕組みを作った。ただ、10年やってみると、今度は監視が強すぎて現場が不自由だということで、緩和する方向で改革している。これは民主主義の国を代表するメディアとしては健全だと思う。
NHKが改革できずにいるうちに、中国国営放送のCCTVが世界中に覇権を広げ、気がつけばBBCも日本語版を立ち上げ、海外勢のメディアがどんどん日本に参入している。しかし今、現場は苦しそうだ。状況は僕が辞めてからも悪化している。報道では、官邸サイドのリクエストに応じようとしているんじゃないのか、と思うような要望が内部であったとも聞く。現場を解放してあげたい。そうしたらもっと自由で細かなニュース報道ができる。
今こそ前向きなメッセージを出してほしい
――視聴者はNHKとどのように向き合っていけばいいのでしょうか。
NHKは今こそ前向きなメッセージを出してほしい。視聴者側も「おカネを払っている俺たちのメディアなんだから、もっと使わせてくれ」という声を高めてほしい。「いらない、来ないで、見たくない」ではあまりにも寂しすぎる。
そんなことをしていたら、NHKはどんどんいいように使われてしまう。監視の目が行き届かなくなり、市民が突き放したNHKを「いいプロパガンダ機関が手に入った」と待ち構えている権力サイドがいるんだぞと。そういうことも念頭に置いたほうがいい。ちょっとした用語の変化、映像の編集、取材の偏りみたいなことが、気づかないうちに進む可能性がある。
現政権がどうこうという話ではない。そもそも放送メディアは権力側にとって都合のよいメディアで、テレビの歴史はまさに権力との戦いだったからだ。NHKもしっかり市民サイドに引きつけておかなければならない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら