堀潤氏「NHKの強硬姿勢は損、まず改革が先だ」 「NHKは見ない、いらない」で本当にいいのか

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CNNがなぜ世界中で見られるメディアになったのか。ひとつはディベートニュース局ということがある。オバマ政権のときには、ある時間帯では銃規制に賛成するキャスターが、反対する論客と議論している。またある時間帯では、反対派のキャスターが議論している。大統領選挙直前にはキャスター同士が集まってディベートをしたりする。これが面白い。NHKもキャスター同士が安倍晋三政権について真剣に議論する番組があったら、むちゃくちゃ面白いでしょ(笑)。視聴者も「こういうのを見たかったんだよ」と思うはず。

堀潤(ほり じゅん)/1977年生まれ。元NHKアナウンサー、2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表。TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスターなどを務める。NHK時代については、「初任地の岡山ではアナウンサーだったけれども、現場取材をしたかったのでニュースをあまり読まず、ディレクター、記者、カメラマンなどの役目を兼ねてあらゆる作業をやっていました。鍛えられましたね」と語る(写真は記者撮影)

英BBCも世界に名だたる存在だ。彼らは約10年ごとに経営のあり方を見直すように決まっている。BBCはかつて、イラク戦争に加担したブレア政権から圧力があったといわれ、トップが解任されたことがある。これには視聴者から抗議が起きた。そこで信頼を回復するために経営委員を公募し、報道を監視する仕組みを作った。ただ、10年やってみると、今度は監視が強すぎて現場が不自由だということで、緩和する方向で改革している。これは民主主義の国を代表するメディアとしては健全だと思う。

NHKが改革できずにいるうちに、中国国営放送のCCTVが世界中に覇権を広げ、気がつけばBBCも日本語版を立ち上げ、海外勢のメディアがどんどん日本に参入している。しかし今、現場は苦しそうだ。状況は僕が辞めてからも悪化している。報道では、官邸サイドのリクエストに応じようとしているんじゃないのか、と思うような要望が内部であったとも聞く。現場を解放してあげたい。そうしたらもっと自由で細かなニュース報道ができる。

今こそ前向きなメッセージを出してほしい

――視聴者はNHKとどのように向き合っていけばいいのでしょうか。

NHKは今こそ前向きなメッセージを出してほしい。視聴者側も「おカネを払っている俺たちのメディアなんだから、もっと使わせてくれ」という声を高めてほしい。「いらない、来ないで、見たくない」ではあまりにも寂しすぎる。

そんなことをしていたら、NHKはどんどんいいように使われてしまう。監視の目が行き届かなくなり、市民が突き放したNHKを「いいプロパガンダ機関が手に入った」と待ち構えている権力サイドがいるんだぞと。そういうことも念頭に置いたほうがいい。ちょっとした用語の変化、映像の編集、取材の偏りみたいなことが、気づかないうちに進む可能性がある。

現政権がどうこうという話ではない。そもそも放送メディアは権力側にとって都合のよいメディアで、テレビの歴史はまさに権力との戦いだったからだ。NHKもしっかり市民サイドに引きつけておかなければならない。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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