NHK受信料制度、「合憲」でも山積する課題 公共放送としてのあり方が問われている

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メディア業界はここ数年で激変した。動画配信サービスでは、近年は米アマゾンや米ネットフリックスなど、海外の有料サービスが勢力を広げている。既存の巨大勢力である携帯会社に加え、民放各局の動画配信も充実してきた。中でもサイバーエージェントとテレビ朝日による「Abema(アベマ)TV」は、さまざまな大型企画で注目を集める存在だ。

これらのサービスは無料か、月額300円から1000円程度。一方、NHKの地上波契約は月額1260円、衛星契約は同2230円(2カ月払い、口座振り込み、クレジット払いの場合)だ。

動画メディア以外でも、フェイスブックやツイッターなどのSNSが広く普及したうえ、新旧の企業が多くのネットメディアを立ち上げた。ユーザーは手元のスマートフォンで、かつてないほど早く、多くの情報を得ることができる。こうした変化を受け、家にテレビを置かない若者も年々増えている。

”公共性”とはいったい何なのか

NHKによる公共放送が本当に有意義で必要なのか。「そうではない」と考える層がいるからこそ、不払い訴訟が起きているわけだ。NHKのあり方も、デジタル時代にあった形で再検討されなければならないだろう。

元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤氏は、公共放送局としてのNHKのあり方について、こう主張する。

「あれだけの巨大組織が、個人に対して訴訟というアプローチしかできないのは情けない。裁判はネガティブな世論の火が付きやすい面もある。それよりも先にやるべきことがある。広告と切り離された立場ならではの調査報道はもちろん、アーカイブスを開放したり、公共物としてのNHKの電波や施設、機材を一般の方が使えるようにして地域情報の発信を手伝ったりと、より市民に使ってもらえるNHKに変われば、皆が喜んで受信料を払ってくれるようになるだろう」(堀氏)

NHKにとってもコストをかけた強硬手段に出ずとも支払率が高まる形が望ましいはずだ。NHKのあり方については総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」で検討が進められている。そうした過程を経て、本当の意味で「みなさまのNHK」になれるのか。最高裁のお墨付きは、公共放送としての重い責任をNHKに課したともいえそうだ。
 

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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