懸案の少子化対策が一気に前進した真の理由 木原誠二・小泉進次郎、「2兆円の核心」を語る
――大学はスペースも広いし建物も立派です。
小泉:学食を想像すると楽しい。学食の中に幼稚園児、保育園児、それと老人ホームから来ているおじいちゃん、おばあちゃん、それと学生がいる。みんな一緒に食べている。キャンパスの中には園児さん、おじいちゃん、おばあちゃん、若者がいるので、乗り物としてはベビーカー、車いす、そしてスケボーや自転車がある。
そういう景色があふれている国にしたい。僕は2020年のパラリンピックでこの意義を訴えなきゃいけないと思っている。1964年の東京大会は初めてオリンピック、パラリンピックを共催した大会だった。その国が2回目やるんだったら、ぜひ「オリパラ」ではなく、「パラオリ」にするくらいのことをやったらいい。人生100年時代を到達する国が、これから世界に対して提示していく新たな社会は、真の意味でのバリアフリー社会ですと。
だから本当だったら、オリンピアン、パラリンピアンが一緒に競技するとか、そういったことをするとすてきだけどね。たとえばバスケットだったら、オリンピックのバスケット日本代表の試合が第1試合で、第2試合はパラリンピック日本代表の車いすバスケの試合を見られるようにする。そういったふうに混ぜれば、観客は両方見られるのにね。
混ぜるのが大変であれば、せめてパラリンピックのあとにオリンピックにすべき。オリンピックが終わって1回シューって終わった感じになって、余韻でやっているパラリンピックじゃなくて、パラリンピックで盛り上げてオリンピックで最高潮にしていく、というほうが両者幸せだと思う。
長生きして幸せを感じる社会へ
――これから分離・分断ではなく、混ぜていく社会にするためのカギになる言葉が「人生100年」ですね。これまでは80歳の人は「余生を静かに暮らしたい」と思ったかもしれませんが、「あと20年もあるんだったら引っ込むのではなく混ざっていたい」と考えて、若い人たちにも寛容になるかもしれない。
木原:高齢者の方に人生100年という話をすると「そんなに生きなければいけないのか」というネガティブな反応をする人も多い。これを長生きをして幸せ、と感じられる社会に変えていかなければいけない。
小泉:リンダ・グラットンさんが『LIFE SHIFT』で言っているのは、人生100年の議論は長生きのデメリットに目を向けることではなくて、どうやったら長生きできる恩恵を社会として感じることができるように変えていけるかっていうことがエッセンス。人生100年を一人ひとりの国民が希望を持って生き抜くことができる。そんな社会をつくっていかなきゃいけない。
――「希望」という言葉が今年は、あまりよくないイメージになってしまいましたが。
小泉:いや、今年は政治的に「希望」っていう言葉がキーワードだったのは間違いないと思う。最近、村上龍さんがあるコラムで「希望」っていうことについて書いているのがすごく印象的だった。
「果たして今の時代、国家は希望を与えることができるんだろうか」、と。村上龍さんが言っているのは、もう希望は国家が示すものではなくて、一人ひとりの中に希望があって、その一人ひとりの希望をかなえることができるような社会を持っているかどうかが大事だと。これ、僕は自分の中で腑に落ちるんですよ。まさにそれって僕らが人生100年時代の中で議論してきたことと同じだな、と。
1つのレールではなくて、多様なレールを社会が用意していかないといけない。だから一人ひとりの中にある希望が実現しやすい、しなやかで懐の深い、柔軟性のある多様な社会をつくっていきたい。
木原:今回のパッケージの議論の底流にあるのも、まさにその考え方だ。国が1つの選択肢を迫るのではなく、どんな選択をしても損しないように。その選択をした結果、何か不利益になったり、次の道が狭まったりしないように。今回もそこに注意をして制度設計した。「多様なレール」という理念は貫かれていると思う。
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