米国株の高値波乱が「暴落」につながる危険性 市場は悪材料を見ても見ぬふりをしている

拡大
縮小

これから両院での法案一本化については、上院案に近いものになるという見解が有力だ。というのは、12月2日(土)の上院本会議での可決では、賛成51に対し、反対49と、僅差であった(共和党は52議席を占めるので、1人造反者がいたことになる)。

一本化後の法案が、上院案から乖離したものになると、反対者が増える恐れがあるため、一度可決した上院案に近いものとし、確実な可決を期す、ということが見込まれているわけだ。

この場合、特に株式市場が注目する法人減税についてはどうか。現行の35%から20%に引き下げる時期は、下院案が2018年から、上院案が2019年からとなっているので、現時点では、法人減税の実施は、来年ではなく再来年の公算が高いという情勢だ。

例えば法人税率を22%への低下にとどめる、という案も検討されていると言われており、まだ先行き不透明な部分もある。仮に2019年からの法人減税実施にずれこんだり、税率が22%までの引き下げで終わったとしたらどうだろうか。それは確かに下院の「2018年から20%に」という案よりは後退だが、米国株価が打撃を被るまでの材料にはなりにくいだろう。

債務上限問題もマイナス材料にはならず

では、「中立材料」はどんなものがあっただろうか。12月8日(金)が期限の、債務上限引き上げと暫定予算策定だ。債務上限引き上げについては、今のところ何も手が打たれる様子がなく、12月9日(土)以降、実は米国国債を新規に発行することができなくなっている。ただし、財務省によれば、国債を発行せずとも、来春辺りまでの資金繰りはつくということなので、すぐに問題化はしにくい。

暫定予算については、とりあえず今後約2週間(12月22日(金)まで)の短期の暫定予算が策定された。したがって、この約2週間以内に、再度暫定予算を組むかどうかを審議しなければならない。

野党の民主党は、DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals、幼少期に親に連れられて渡米した不法移民について、本国への強制送還を延期する措置)を撤回する、とのトランプ政権の方針を取り下げることを、暫定予算策定に協力する条件として挙げている。このため、もめる可能性が高く、暫定予算が組めずに、12月23日(土)以降はしばらく政府機関が閉鎖される可能性が高い。しかし、だからといって米国経済に大きな打撃になるとも見込めない。それゆえ、中立要因だと考えている。

次ページ米国株の下落材料とは何か?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT