日本人が知らないフィンテック大国の実像

あのインドで急速に進むキャッシュレス

インドのフィンテック革命の“震源”とも評されるムンバイで、セキュリティやプライバシー保護などにおける分野において、AIとブロックチェーンの技術を生かしたビジネスソリューションを提供するスタートアップ企業を立ち上げたインド人エンジニアの男性は、こう話す。

インド・ムンバイでフィンテックに関するスタートアップを立ち上げたインド人たち(筆者撮影)

「フィンテック分野では今、社会貢献などをも成しうるスタートアップが続々と生まれています。われわれのスタートアップでも、女性起業家の支援につながる策を開発するなど、インド全体の経済が活性化する潮流を作っているという興奮があります。特にインドは、農村部など貧困層が多い国なので、新たなアイデアがゼロから生まれやすい土壌があるのです」

ちなみに、ブロックチェーンとは、インターネット以来の発明ともいわれ、複数のコンピュータで情報を共有し、相互に監視しながら外部からの侵入などを防ぐ高いセキュリティ機能を確保している。システム導入コストも飛躍的に安いために、中小企業や自治体などが簡単に導入できるという特徴を持っている。

世界最大規模のIDデータベース

インド政府はナレンドラ・モディ政権下で、“デジタル・インディア”と呼ばれる電子政府プロジェクトを推し進めている。なかでも、生体認証を利用した国民IDシステム“アドハー”は、指紋で本人証明を可能とするシステム。国民全員に12桁の個人識別番号を付与し、全国民の情報を1つのデータベースに集約する取り組みを行っている。

今年7月時点で、約13億人に上るインド国民のうちすでに11億6000万人近くが登録済みだといい、世界最大規模のIDデータベースと化している。さらに、起業を促す“スタートアップ・インディア”という取り組みがフィンテックで新たな起業を目指す若者たちを後押しし、起業を目指す学生が増えているという。

そもそもインドでは、2000年代初頭まで国民の半数近くが身分証明書を持たず、デジタル金融取引などはもちろん不可能だった。しかし、貧困層へも行政サービスが行き渡ることを主な目的として導入されたアドハーにより、政府主導でデジタル化をゼロから推し進めることで、銀行口座を持つ人々の割合も少なかった農村部まで普及してきた。これをきっかけに、巨大なフィンテック市場が急成長を遂げる新たなモデルとして注目され始めた経緯がある。

さらに、日本でもその騒動が大々的に報じられた、突然の高額紙幣の廃止宣言は、マネーロンダリングやブラックマネーの撲滅が主な目的として掲げられていたが、現金不足が混乱をもたらし、電子決済の利用が急速に高まったことで、結果として金融のデジタル化が加速したといわれている。

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