「性暴力」に関する刑法改正には不安がある まだ明治時代の発想に引きずられている

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性暴力と聞いて、あなたはどんなイメージを持つだろうか。暗がりで、見知らぬ相手からレイプされる若い女性? 子どもを言葉巧みに誘い出し、連れ去ろうとする変質者? 日常と隔絶された特殊な被害を思い浮かべるかもしれないが、性暴力はすでに、あなたのすぐそばで起きている。

性暴力のある日常とは?

「特別な人に起きる、特別な事柄ではなく、年齢や性別、性的指向も問わない。例えば、痴漢。固定電話離れや携帯・スマホの普及、個人情報保護の推進によって多少は少なくなったかもしれませんが、“わいせつ電話”もそう。いじめのなかで起きる場合もある。スカートめくり、ズボンやパンツを引きずりおろすこと。殴る、蹴るの延長線上で、服を脱がしたり、性器を触ったりすることも性暴力です」

そう教えてくれたのは、レイプクライシス・ネットワーク代表の岡田実穂さん。お互いに同意のない性的言動は、すべて性暴力だと指摘する。右に挙げたのは、ほんの一例だ。

これほどありふれた暴力であるにもかかわらず、

「いろんなアンケートを見ても、自分が性暴力の被害に遭ったと認識されている方はすごく少ない。被害を言葉にできていません」(岡田さん、以下同)

岡田代表らは、性別や性的指向を問わず性暴力被害者を支援している

セクハラのように、会社の上司など力関係に差がある状況を背景にして、被害が生じることも珍しくない。

「一方が嫌とは言えない状況や、フラットに話し合えない関係というのは、バランスが悪いですよね。そうしたパワーバランスが悪い状態のなかで、性を使って相手を支配するのが性暴力。特に日本社会では、性を隠さなければいけないものとされ、また個人的な問題とされがちですから、被害に遭っても周囲に話しにくく、表面化しづらい。そこに加害者は付け込みます」

夫婦や恋人、パートナーから被害を受けることも。

「いわゆるDVのことです。DVとは、身体的、精神的、社会的、性的暴力の4つに大きく分けられます。このうちどれか1つだけが起きるのではなく、さまざまな形態の暴力が起きて、重層化していくことのほうが多い。DVでの性的な暴力とは、義務的にセックスをさせられることもあれば、レイプのような形で起きることもあります

DVの難しい点は、パートナーとの間に起きるため公になりにくいことだ。

「家族の問題だからと家の中だけにとどめようとしてしまう。暴力は、より親密な関係のなかで深刻化しやすく、外に出にくいのです」

上司や家族など、顔も人柄もよく知る相手と、性暴力の残酷なイメージが重ならない人もなかにはいるだろう。しかし実態は、警察庁の統計によれば、強姦被害の加害者は約半数が「顔見知り」だ。

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