「性暴力」に関する刑法改正には不安がある

まだ明治時代の発想に引きずられている

また性暴力は、社会的に弱い立場に置かれた人ほど、被害を受けやすい傾向にある。岡田さんによると、パートナー間での暴力被害についての海外調査で、異性愛者の被害は3人に1人だったのに対し、レズビアンは44%、バイセクシャルの女性は61%がパートナーからのレイプやストーカー、身体的暴力の被害に遭っていたという。

日本の被害状況はどうか。法務省によれば、2015年度の性犯罪の認知件数は強姦1167件、強制わいせつ6755件。ところが、法務省・法務総合研究所の犯罪被害者(暗数)実態調査では、警察に被害を届け出た人はわずか13.3%にすぎない(’13年)。

「そもそも日本では、性暴力被害の実態が把握されていません。調査対象は女性だけで、男性は含まれていないのです」

110年ぶりの刑法改正

今年7月、刑法の性犯罪規定が110年ぶりに改正され、強姦罪は強制性交等罪に名称が変わり、男性も対象に含まれるように。また、被害者の告訴がなくても加害者を起訴できる。

【刑法改正のポイント】
●起訴の条件
改正前:被害者の告訴が必要
→改正後:被害者の告訴は不要
●被害者
改正前:女性
→改正後:男性を含める
●罪名と法定刑の下限
改正前:強姦罪/懲役3年以上
→改正後:強制性交等罪/懲役5年以上
改正前:強姦致死傷罪/懲役5年以上
→改正後:強制性交等致死傷罪/懲役6年以上
●そのほか
改正前:2人以上で強姦した場合に懲役4年以上とする集団強姦罪
→改正後:廃止
※新設:親などの「監護者」が18歳未満への性的行為をすれば暴行や脅迫がなくても罰する監護者性交等罪、監護者わいせつ罪を新設

詳しい変更点とポイントは上の表のとおり。岡田さんは、

「これまで法的に被害者ではないとされてきた男性が対象となった点について、一定の評価ができるけれど、これで事足りるかといえば別問題」と指摘する。

「陰茎の挿入のみを性犯罪とするという趣旨は変わっていません。明治時代にいまの刑法が作られたときの考え、男性の血統を守るためという発想が抜けていない。強制性交等罪という名前は性交をイメージさせる。性暴力を、性暴力と思えない人が多い社会のなかで、性交の罪であるかのような印象を与えてしまう。性暴力は支配の問題で、セックスの話ではないんです

今回の法改正では、「相手の抵抗を著しく困難にするほどの暴行や脅迫」を用いた場合に限り、加害者を処罰できるとする『暴行・脅迫要件』も残っている。

性行為に同意しなかったことの証明を被害者にさせるのではなく、加害者に、いかにして同意を取りつけたかを証明させるよう変えていくこと。まずは3年後の見直しに向けて訴えていきたいですね。110年ぶりの改正という動きをここで終わらせないように」

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