「性暴力」に関する刑法改正には不安がある

まだ明治時代の発想に引きずられている

被害者の落ち度を査定するかのように重視する見方は、この社会に浸透している。「露出の多い服を着ていたから被害に遭う」「本当に嫌だったら抵抗したはず」などの偏見はあとを絶たない。また、「痴情のもつれ」「男性はどんなセックスも喜ぶはずだから、女性のようには傷つかない」といった思い込みも根強い。これらはすべて『レイプ神話』と呼ばれるものだ。

岡田さんは、これらの神話を「服装や行動いかんにかかわらず性暴力被害は起きます、加害者がいる限り」と、ばっさり切り捨てる。

「例えば、被害に遭って抵抗できなかったのは、本当に嫌だから余裕をなくしていた可能性もある。被害に遭ったとき、多くの人が恐怖でフリーズしてしまうことはよく知られています。レイプ神話を突きつめれば、家にいろ、となる。実際の被害状況を見れば、かなり多くの被害が、安全と思い込まれている“家の中”で発生しているわけですから。家を守る制度のなかで培われた物言いを、いまも続けているにすぎないのでは?」

性暴力被害者が置かれる状況はさまざまだ。

「被害に遭ったことを理由とした社会的な生きづらさは、多岐にわたります。例えば、仕事ができなくなりハローワークへ行くように言われたら、そこでもレイプされたと話さなくてはならないのか。国は1つの窓口で支援を受けられるワンストップ・センターの増設を目指していますが、本来であれば、性暴力サバイバーがいるという前提のなかで、さまざまな社会資源を提供できるシステムが必要。医療的なサポートを受けたい人、警察や弁護士を望む人、個別にタイムリーな支援が求められています」

加害者にも「強姦神話」適用

性暴力をめぐり、前述のとおり“被害者にも落ち度がある”といった『レイプ神話』がまことしやかに喧伝されてきた。加害者についても同じで、「性欲が非常に強い」「異常者」などのイメージが広く社会に浸透している。警察や裁判所も例外ではない。

大阪府立大学の客員研究員で、性暴力加害者の研究を行う牧野雅子さんが指摘する。

元警察官の牧野さんの警察学校の同期が連続強姦事件を起こしたことから加害者研究を始めた

「“性犯罪は性欲によって起こる”という前提で、加害者の取り調べ、供述調書の作成が行われています。妻とのセックスは週に何回か? 満足しているのか? 性欲は強いほうか? などと尋ねて、性的に欲求不満であったことを聞きだす。妻を呼んで、夜の生活はどうなっているのかと聞くケースもよくあります」

これらは犯行動機を調べて立証するために行うものだが、加害者が語りだすより前に、警察の手で“加害行為をふるった原因は「性欲」”というストーリーが作られているかのようだ。

「何を聞くか、どう取り調べるかについては、捜査の参考書のような本があり、そこにも“早いうちに性的欲求不満だったということを調書にしておく”などと書かれています」(牧野さん、以下同)

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