「問題のデパート」欧州をドイツは救えるのか 欧州の旗手にさえ「衰退」の兆候
こうした混乱の中でもドイツは、国内でも支持が高く、海外からも尊敬される女性をリーダーに据え、適度な立ち位置を維持してきた。しかし、昨今、ドイツの新聞には「メルケルはいつまで権力の座に居座れるか」という見出しが躍っている。
中道派の新聞である「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」紙は、自由主義政党の自由民主党 (FDP)のクリスティアン・リントナー党首のセンセーショナルなインタビュー記事を掲載。彼は11月25日、連立から撤退すると表明したのだ。
窮地に立たされるドイツの政治
9月の選挙でメルケル首相の保守派CDU・CSU同盟は、勝利し第1党を守ったものの、前回の議席数を大きく下回ったことで、難しい連立交渉を迫られている。社会民主党 (SPD)自体も議席数を大幅に減らした。メルケル政権との連立を継続してきたことが敗因と分析しながらも、党員が承諾すれば連立復帰もありうると述べている。
メルケル首相はこの数週間、いずれも今回の選挙で議席数を大幅に伸ばした財界寄りのFDPと左派の緑の党との連立に向けて交渉を続けてきたが、11月下旬に連立協議が決裂したことで、ドイツの政治は窮地に立たされている。欧州の指導的立場にあるドイツの危機は、現在EUが抱えるほかのどの問題よりもEUに悪影響を及ぼしかねない、という懸念が欧州各地で広がっている。
だがこれは過剰な心配かもしれない。ドイツ政治には再編が必要であり、第2の選挙 (メルケル首相はSPDの党員が連立を拒否すれば、代替案も視野に入れている) で新しい政治形態が生まれるかもしれない。
しかしこうした状況下では、今回ドイツ連邦議会で初めて議席を獲得し第3党に躍り出た極右政党「ドイツのための選択肢 (AfD) 」がさらに力を伸ばすことになりかねず、これこそ左派と右派が共存するリベラルなドイツがおそれていることだ。