「問題のデパート」欧州をドイツは救えるのか 欧州の旗手にさえ「衰退」の兆候

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比較的大きな国だけでもこれだけの問題が発生している。EUに加盟している小中規模の国は、大国と同じくらい、あるいはより深刻な問題を抱えている。ベルギーは、何人かの大使によれば、あと10年もしないうちに消滅してしまうとされていて、今でも大部分は自治権を持つフランドル人(オランダ語圏)とワロン人(フランス語圏)の地域に分裂してしまっている。

ハンガリーでは、移民受け入れに対して断固として反対する人たちに支持されている与党のフィデス=ハンガリー市民同盟が、移民を受け入れるべきだという欧州裁判所の判決に公然と反抗している。

ロシアとの関係も悪化している

また、オーストリアでは、保守派の指導者セバスティアン・クルツ氏と極右のオーストリア自由党の連立協議が先月、「非常に良いスタート」を切った。彼らの話し合いがうまくいけば、クルツの国民党と自由党は、移民受け入れなどについて決定権を加盟国政府に戻すことを確実にするために、EUにとって敵対的な連合を形成するだろう。

オランダの政党は、7カ月かけて議会で1票の差で多数決を得た、連立政権を急いでまとめたものの、今後数カ月以内に崩壊すると世間では予想されている。

チェコ共和国は、移民の受け入れを拒否した加盟国の1つだが、先月に行われた選挙後の連立政権での話し合いは決着がつかず、勝利した新興政党「ANO」のアンドレ・バビス党首は、少数党政府を樹立すると述べている。200万ユーロのEU補助金をめぐる詐欺罪に問われている同氏が率いる少数党政府は、政治的混乱をもたらし、予算の合意を困難にすることが予想される。

一方、ドナルド・トランプ米大統領は、欧州のいずれの国でも、黙らせることのできない無責任な放言家だと見なされている。本人もEUが好きではないことを考えると、欧州における米国と最も親しい同盟国を米国が支援することはありえないだろう。こうした国々は今後、自ら自国を守ることを学ばなければならない。

ロシアに対するEUの敵対心は、クリミアのウクライナ地方における侵攻、そして、東部ドンバス地域における反政府勢力への支援によって強まる一方で、解決の糸口が見つからないどころか、痛みを伴う状況になってきている。

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