貧困で塾に通えない子を救うクーポンの正体

教育格差に切り込むクラウドファンディング

しっかりと私たちが思う社会の状況をお伝えしたうえで、絶対な正解があるわけではないので、議論を成熟させていくプロセスがすごく大事なのではと感じています。「プロジェクトをやっている人」と「外の人」が議論するのではなく、このプロジェクトを見た人たちが家族の中で議論をされている。奥様は原体験もあり「塾は大事だ」と思っている一方で、旦那様は「自分は塾になんか行かなかったからまったくわからない」と議論に。しかしそれは大事なプロセスだと思うんですね。そこから解決策を見出していくためにはしっかり結果を出していく必要があるということで、今回のプロジェクトは「効果測定」もしっかりやっていきます。「議論があるなら1度やってみる、その中でうまく行ったこと、うまくいかなかったことっていうのを検証して次につなげていく」ということで、次の社会の絵が見えてくると思っています。われわれはこれまでの6年間の実績があって「これはうまくいくだろう」と仮説を持ってやっているわけですが、まだまだそこに対しては疑問を持たれる方々がたくさんいらっしゃるというのはおっしゃるとおりだと思います。だからこそ、こういった形でやってみて実際どうだったのかということも含め、社会に説明していく責任があると思っています。

:知恵を出し合って。

今井:「やってみる中で、また議論して」というのを繰り返す中で物事が決まっていくというのは、ある種、健全な状況なのではないかなと思っています。

貧困家庭の子どもたちを社会全体で支えていきたい

:今回の取り組み以前から子どもたちの教育サポートをやってこられましたよね。その原点は?

今井:私は学生時代に不登校のこどもたちの家庭教師をしていました。彼らを富士山や海外に連れていく体験ができる支援などを行う中で、生き辛さを抱えている若者たちに出会ってきたんですね。私が印象に残っているのは、大学4年生のときに出会ったある青年。能面のような顔の青年でした。自分とほぼ同年代なのですが、かなり長い期間社会とのかかわりを断ち続けたことによって、非常に生き辛さを抱えていたんですね。そのときに私が職員さんに言われたのは、「彼みたいな若者に今出会えたのは何かの縁かもしれないね。なぜなら彼は完全に社会から消されてしまっていて、君はこれから生きていくうえで彼みたいな若者に出会うことはまずないと思うよ」と。それがすごく心に残っていて。僕はこの後学習塾に勤めたのですが、そこで、そのとき職員さんに言われた言葉の意味がわかった出来事が。その学習塾の1つ上の階にシングル家庭の方がいたのですが、その方に「勉強楽しいよ。授業が終わったら毎回行ってやってみない?」と説得を続けていました。結果、無料の体験授業を受けてそのまま入会をしてくれたのですが、結局、最終的には会費を払えずに辞めてしまいました。本当にサポートを必要としている方々には、通常の世の中の仕組みではなかなかサポートを届けられないんだなと。このことが心に残っていたこともあり、東日本大震災を契機に会社を辞め、6年半前に「チャンス・フォー・チルドレン」を始めました。

:これまで「チャンス・フォー・チルドレン」活動で、どれくらいの子どもたちとのかかわりが生まれてきましたか?

今井:延べで約2000人の子どもたちにクーポンを提供しました。東北や関西でこのサポートに応募してこられる人たちは、毎年1000件以上。1000人以上の子どもたちが毎年、意欲を持って自分でエントリーシートを書いて応募してこられるんですね。しかし実際に1年間で届けられる人数は、多くても400人から500人。毎年多くの子どもたちが期待を持って応募してきてくれるのですが、落選してしまうんですね。私たちもその子どもたちに毎年落選通知を送らなくてはいけないのは、胸が痛い仕事です。「スタディクーポン・イニシアチブ」の取り組みを始めようかと思ったきっかけは、ここにあります。

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