貧困で塾に通えない子を救うクーポンの正体 教育格差に切り込むクラウドファンディング
堀:今まではNPO事業者同士の横のつながりや、役所との連携が弱かった部分があったのではないですか?
今井:そうですね。そこはもともと大きな壁がありました。もともとは皆同じ目標を目指してやっているのに、少しずつやり方が違っていたり、そもそも情報共有が足りなかったり。一匹狼のようにやってきた部分はあったと思います。こうした仕組みが地域に入っていくことによって、「教育格差をなくそう」「地域で子どもたちを育てていこう」ということに対して力を合わせていけるようになると思っています。
塾は必要か?「議論があるなら1度やってみる」
堀:クラウドファンディングを通して、支援者からはどのような声が聞こえてきていますか?
今井:今、すごくたくさんのメッセージが届いています。「自分の周りにもこういったことを求めている人がいる」という声もありますし、「自分も当事者だったのでこういった制度があればよかったのに」と応援してくれる人もいます。何かしらの形で「おかしいな」と思ってきた人たちが、今回のクラウドファンディングを通じて支援をするという気持ちを表明してくれています。
堀:可視化されていますね。クラウドファンディングのリターンは何ですか?
今井:物を購入していくのではなく、寄付型のクラウドファンディングで、「皆さんの寄付で何人の子たちをどれくらいの期間サポートできます」ということをリターンとしています。
堀:なぜでしょうか?
今井:このプロジェクトに参加したいと思ってくださる方々は物が欲しくて支援するのではないのだろうと思っていて。少しでも子どもたちの環境がよくなることに使ったほうが支援者のニーズを満たしていると判断しました。
堀:「新たな貧困ビジネスだ」と批判する人もいますが、今井さんはそうした声には普段どう反論をされていますか?
今井:あまり気にしていません。われわれはやるべきことをしっかりやっていくだけだと思っています。ただ、その中に大事な指摘も。「塾は必要あるのか」「学校教育と塾はどう分担するのか」といった問いかけは、ある種、本質的な問いで。実は僕らもそうした問いから今までは逃げてしまっていたところはあったのですが、この機会にしっかりとこうした問題について社会全体で議論することが大切だと思っています。「すべて学校で担うべきだ」というお考えの方もいますが、そのような考え方をするのは間違いだとは思いません。実際のところ、塾などの学校外の環境も子どもたちの教育を担っている部分があります。そうした状況を踏まえたうえで、どうやって日本の子どもたちをみんなで支える仕組みを作っていくのかが大きなテーマだと思うので、そこの議論から逃げる必要はないと思っています。