「逃げ恥」「半沢直樹」の続編が決まらない理由 大ヒットドラマほど脚本も演者も悩ましい

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加えて、綾野さんのように「過去の実績を超えるためのプレッシャーが厳しい」などの精神的な負担も大きいため、最近は「むしろ新たな役割を与えるほうがいい結果を生む」という人事判断も増えているようです。

「家政婦のミタ」続編を書かない脚本家

一方、プロデューサー、脚本家、演出家のスタッフ側も、「続編に乗り気」とは限りません。

視聴率の獲得を求められるプロデューサーは、「続編を作れば、ある程度の結果は得られる」とわかっていても、「だからといって、すぐに作ろうとは思わない」という慎重な人がほとんど。自局内や視聴者からの要望が強くても、もともと続編を視野に入れた企画でなければ、「新たなドラマを作る」というスタンスを優先させます。

さらに、最も続編に否定的なのは脚本家。手掛けたドラマは「自分の子ども」というほど思い入れがあり、「無理に続編を作って、子どもの評価を落としたくない」「よほど納得できるものが構想できなければやりたくない」と思っているのです。

長年ドラマ業界を牽引してきたベテラン脚本家ほどこの傾向があり、たとえば「家政婦のミタ」「女王の教室」(日本テレビ系)などを手掛けた遊川和彦さんは、続編をいっさい書きません。実際に続編は、視聴率・評判ともに下がるケースが大半を占めるだけに、「遊川さんの方針は、ごく自然なもの」とも言えるでしょう。

また、「コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-」(フジテレビ系)は、2008年に第1弾、2010年に第2弾が放送され、その内容と結末から「完結」といわれていました。しかし今夏、7年ぶりに第3弾が放送され、脚本家が変わっていたのです。

賢い視聴者たちはこの変更に気づき、「脚本家は続編をやりたくなかったのではないか」という疑問の声を上げていました。本人が真相を語ることはないでしょうが、日頃取材をしている私から見ても、あながち間違っていない気がするのです。

ビジネスシーンでも、新商品やプロジェクトを成功させた人は、その商品やプロジェクトに「自分の子ども」という感覚を抱く傾向があります。だからこそ、「中途半端な派生商品や類似プロジェクトで評価を落としたくない」し、「それよりも、まったく別の商品やプロジェクトを手掛けたい」というのが本音。特にクリエーティブ思考の強い人ほど、「1つの作品で完結」という概念が強く、続編・シリーズ化という発想がないものです。

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