「逃げ恥」「半沢直樹」の続編が決まらない理由 大ヒットドラマほど脚本も演者も悩ましい

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これまで私がお会いしてきたビジネスパーソンには、「エッ? あれも、これも、〇〇さんが手掛けたんですか?」と感じた人が多く、スケールの大きい人ほど続編・シリーズ化よりも、新商品・新プロジェクトを選んでいました。

「逃げ恥」以外の再共演も可能性十分

最後に話を「逃げ恥」に戻すと、業界内では「続編の可能性は十分ある」という見方が多数派。今年、新垣結衣さんは「コード・ブルー」に、星野源さんは「コウノドリ」に出演しましたが、どちらも医療ヒューマン作だけに、「逃げ恥」のイメージを緩めるには最適な作品でした。2人がいったん「みくりさん」「平匡さん」から離れたことで、続編を演じやすくなったのは間違いないでしょう。

あらためて「逃げ恥」の最終回を振り返ると、「登場人物全員が幸せになる」という大団円でした。しかし、見逃せないのは、「幸せになったけど、必ずまた面倒なことが起きる。だから模索は続いていく」という含みを持たせた終わり方だったこと。

続編があるとしたら、「新たな面倒が起こり、新たな模索がはじまる」という形になるでしょうし、「そもそも夫婦生活のほうが面倒は起こりやすく、模索が必要」という見方もできるなど、多彩な描き方が可能です。漫画原作者・海野つなみさんや出版社の了解を得ることは当然ながら、「続編に必要な拡張性に関しては、まったく問題ない」と言えるでしょう。

みくりが最後につぶやいた「いい日も悪い日も、いつだって火曜日からはじめよう」というセリフは、視聴者にとっては「また火曜22時に戻ってくるということ?」という期待感につながりました。今はその期待感を抱きつつ、気長に待つのが得策ではないでしょうか。

もし「逃げ恥」の続編制作が不調に終わったとしても、決して悲観することはありません。かつては人気者同士の再共演は当然であり、しかも「続編ではなく、新たな作品で再共演させる」という戦略が一般的でした。

たとえば、木村拓哉さんと松たか子さん、観月ありささんといしだ壱成さん、綾瀬はるかさんと山田孝之さん、広末涼子さんと堂本剛さんなどが、続編ではなく新たな作品で再共演。人気者同士だけに、作品の内容が変わっても大きな反響を集めました。新垣結衣さんと星野源さんが再共演を避けているわけではない以上、その可能性は限りなく高いと言えるのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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