「逃げ恥」「半沢直樹」の続編が決まらない理由 大ヒットドラマほど脚本も演者も悩ましい
だから、「逃げ恥」「半沢直樹」のような社会現象を起こすドラマこそないものの、「気づいたらまた見ていた」という状況を作り出せるのでしょう。これをビジネスシーンに置き換えると、「定番商品を手堅く売り続ける」テレビ朝日と、「新たな大ヒット商品を模索し続ける」民放他局という図式になります。
「○○の人」というイメージの呪縛
次に挙げたいのは、キャスト側の事情。続編制作に向けた最初のハードルはキャスティングであり、ドラマプロデューサーたちは、まず主要キャストの意向を確認することになります。
そこで問題となるのは、彼らのイメージとモチベーション。「3年B組金八先生」(TBS系)の武田鉄矢さん、「踊る大捜査線」(フジテレビ系)の織田裕二さん、「家なき子」(日本テレビ系)の安達祐実さんなど、「社会現象を起こした大ヒット作ほど、役柄のイメージがついてしまい、他の出演作にも影響を及ぼす」という懸念があるのです。
どんなに演技力がある俳優でも、見るのが視聴者であることは変わりません。演じる前から「〇〇の人」という特定の強いイメージを持たれてしまうと、ほかの役柄を演じにくくなるため、大ヒット作ほど、「役への愛着はあるけど、再び演じたくない」という俳優が多いのです。
また、私が取材するかぎり、「一度、自分を追い込んでやり切った役を再び演じるのは難しい」と感じる俳優は少なくありません。役作りに励み、撮影現場で追い込み、力を出し尽くした役に再び挑むためには、視聴者の想像を超えるモチベーションが必要。「過去の自分と戦うよりも、新たな役に向き合いたい」と考える俳優が多数派です。
実際、現在続編が放送中の「コウノドリ」(TBS系)で主演を務める綾野剛さんは、「ずっと僕の中で『コウノドリ』は生き続けたまま今まで来ています」「しっかりプレッシャーを与えて、自分自身を追い込んでやらなくてはいけない」と語っていました。画面を通して見ても、インタビューされていても、悲壮感を漂わせるほどの挑戦なのです。
もちろん、「大ヒットすると出演俳優たちがスターになるから、キャスティングが難しくなる」というスケジュールの難しさがあるのも事実。しかし、それ以上に「何年後のスケジュールだったとしてもやりたくない」という俳優や芸能事務所がいるのも、また事実なのです。
これをビジネスシーンに置き換えると、「ヒットや成功の立役者となったビジネスパーソンが、ずっとそのイメージを引きずられ、仕事を固定化されてしまう」というケース。会社や上司から「〇〇の男」「〇〇なら彼女」とみなされ、似た役割を求められるとともに、新たな業務への挑戦がしにくくなりがちです。
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