楽天が企てる「巨大広告会社」への変身計画 膨大な会員データ活用に三木谷氏も自信

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10月の営業開始に先立ち行った実証実験では、視聴者数や購入者数が実数でわかる点が広告主に受けたという。「アンケートなどパネル調査から推定する広告効果の“仮説”だけでは、最後の一押しが足りない、自信を持って投資できないという広告主の悩みがあった。実数で、しかもリアルタイムに近いスピードで効果が見えれば、それを解消できる」(有馬CEO)。

楽天データマーケティングでは、データ整備や広告商品の作り込みを楽天側で、有力広告主への提案営業を電通側で担い、事業の拡大を目指していく。10月は広告主への広告出稿、プランニングなどの提案金額が7月比で11倍に増えた。このうちどれだけが成約に至るかは未知数だが、事業は少しずつ進んでいる。

”嫌われない広告”をどう目指すか

有馬CEOはあらゆるデータを駆使しつつ、”嫌われない広告”を目指す意志を示した(撮影:尾形文繁)

市場が拡大するネット広告だが、一方では「アドブロック」の波が押し寄せている。しつこく表示されるターゲティング広告に煩わしさを感じている人が増えており、米グーグルや米アップルがネット上における利用者の行動のトラッキングを制限する方向に動いているのだ。

有馬CEOは、この点を考慮したサービスづくりの必要性を語る。「(会員から)データを預からせていただくからには、広告といえど、ユーザー側にもメリットの高いサービスを追求しなければならない。性別や年齢といった単純な属性に寄らない趣味・趣向を把握し、個々人が本当にほしいと思える商品の広告が出るような仕組みを作りたい」。

楽天のビジネスモデルは変革期にある。「これまでは楽天市場を中心にしたマーケット(EC)ビジネスの会社だったが、これからは会員情報を中心に据えたデータビジネスの会社になる」と、三木谷会長も語っている。広告事業の成否は、重要な試金石となりそうだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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