楽天が企てる「巨大広告会社」への変身計画 膨大な会員データ活用に三木谷氏も自信

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同じEC企業でも、世界の競合は様子が違う。中国最大のEC事業者・アリババは、売上高の半分超を広告収入で稼いでいるとみられる。米国の調査会社eマーケターによれば、中国のネット広告市場においてアリババグループは、同国IT大手の百度(バイドゥ)、テンセントなどを押さえトップシェアを握っている。

有馬CEOは「足元では米アマゾンも広告ビジネスに力を入れ始めている。完全に潮目が変わってきた」と見る。「楽天は約70ものネットサービスを展開していて、日本で屈指のアクセス数を誇るウェブ媒体といえる。広告の売上高を増やせるポテンシャルは大きい」(同)。

9300万のIDと購買データを生かせる

楽天スーパーポイントがあらゆるところで使えたり、貯めたりできるようにすることで、よりオフラインのデータを取ることが楽天の狙いだ(撮影:梅谷秀司)

超後発といえる楽天が、広告事業で発揮できる強みは何か。有馬CEOは「質の高いID」と「購買データ」の2つを挙げる。楽天には約9300万(2017年9月末)の会員基盤があるが、「ショッピングのためのIDなので、住所やクレジットカードの情報を正確に取りやすい。加えて、実際に買ったかどうかの情報が紐付いているのも、マーケティング上は非常に有利」(同)。

もうひとつユニークな点は、ネット広告やテレビCMと、ECや店頭での購買をすべてIDでつなげて広告効果を把握・分析しようという試みだ。特にテレビCMや実店舗購買においては、これまで「どの広告を見た人がどの商品をどこで買ったか」や「買ってもらうには何回くらい広告を見せるといいのか」という追跡がほぼ不可能だった。

そこにもう一歩踏み込もうというのが、今回の事業の”肝”だ。「テレビがネットにつながっていれば秒単位で視聴データを得ることができる。また、位置情報を活用して来店データを取ったり、楽天スーパーポイントのパートナーになっているコンビニ、ドラッグストアチェーン、飲食店などから店頭購買データを収集したり、楽天カードの決済データも活用できる。これらを組み合わせれば、本当に効果の高い広告手法を見極められる」(有馬CEO)。

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