住友林業と熊谷組、名門タッグが目指すもの 住宅メーカーとゼネコン、それぞれの焦燥は

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
樋口社長は「今後は目先の業績ではなく、中長期的な社会貢献が評価される」と強調する(撮影:ヒダキトモコ)
木造高層建築、という前人未到の分野へと舵を切った熊谷組。鉄骨や鉄筋コンクリート造の建物が増える中、なぜあえて木造という選択肢を選んだのか。その真意を樋口社長に聞いた。

「あくまで対等なパートナー」

――住友林業との提携を決断した理由は

持続的な成長のためには、建設業界でもESG投資が必要だという思いがもともとあった。建設業は今後も当社の中心であり続けるが、その成長はいずれ限界が来る。

東京五輪後も建設業の活況はある程度続くだろう。業績が好調な今こそ、この先の成長に対して投資をしていかなければならない。自前の研究所ですべての技術を丸抱えする経営はもうはやらない。今後は競争力のある技術を持ちつつ、異業種との提携が重要だ。

――なぜ提携先が住友林業なのか?

今年4月、住友林業から協業の提案を受けた。あちらは創業から300年以上も経つ歴史ある企業で、これまでも森林保全などを通じて社会貢献を果たしてきた。そこに当社も協力できないかと思い、提携を模索してきた。

森林は鉄やセメントなどと異なり50年程度で循環し、環境負荷も少ない。だが伐採適齢期の木を使い、新しく植樹しなければ森林は循環しない。そこで木は建築物、間伐材はバイオマス発電という形で当社が出口を作り、森林の循環を促す。日本の面積の7割は山林で、材料が豊富にあるだけでなく、きちんと手入れをすれば防災など国土保全にも寄与する。

――業務提携ではなく相互出資という資本提携を選んだ理由は何か。

業務提携は「こういうことをやった」とメディアにアピールするだけで、本気にならない。だが資本提携は利益にハネ返る面で真剣さが求められる。出資比率についてはさまざまな選択肢があった。相乗効果を生み出すという観点から、今回の比率に落ち着いた

住友林業の20%という数字は、住友林業が株主に提携への覚悟を示すための数字だ。本当は10%でもいいのだろうが、あちらにしてみれば覚悟を示すには20%必要だということだ。

当社が住友林業に20%を出資しないのは、手元の資金が足りないこともあるが、そもそも会社の規模が違うので、対等の出資比率である必要はない。

もう1つは、住友林業は住友金属鉱山から枝分かれした会社で、同社は今も住友林業株の5~6%を保有する大株主だ。提携するとはいえ、それを超えて出資するのは生意気だ。

そうすると3〜4%でもよかったが、相乗効果を生み出すのには100億円規模の投資が必要という結論に達し、それを比率に換算したところ2.85%になった。数字ありきの出資ではない。

次ページ「300年先を見た」提携だ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事