住友林業と熊谷組、名門タッグが目指すもの 住宅メーカーとゼネコン、それぞれの焦燥は

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そのためには、施工力があり幅広い物件の建設を請け負えるゼネコンの協力が不可欠だ。

実際に大和ハウス工業や積水ハウス、旭化成傘下の旭化成ホームズはそれぞれ中堅ゼネコンを囲い込んだ。パナホームを抱えるパナソニックも、松村組を買収するとこの11月に公表したばかりだ。

他方で、出資を受けたゼネコンの多くにも共通項がある。1980年代後半のバブル時代に、不動産開発事業に手を出した結果、経営再建を迫られたのだ。

積水ハウスが出資した鴻池組も、「地元関西では積水ハウスが出資するまでは経営不安がささやかれていた」(中堅ゼネコン幹部)。

相乗効果は未知数

もちろん、課題もある。住宅メーカーの得意とする戸建てと、ゼネコンが手掛ける土木・建築では必要な技術が異なるため、相乗効果は未知数だ。

海外進出にしても、ゼネコン各社は工事の原価管理や現場作業員の手配に苦心しており、大々的な展開には二の足を踏んでいる。

大和ハウスは海外展開の強化を狙い準大手ゼネコンのフジタを買収したが、「買収を契機に積極的に海外展開を仕掛けている様子はない」(大手ゼネコン幹部)。大和ハウスはフジタ以外のゼネコンにも数多く発注しており、施工の内製化が進んでいるとはいえない。

さらに今回、住友林業と熊谷組が提携の主眼に据える木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べ、耐火性や耐震性が劣る。

外国産木材との価格差もネックで、木造が採用されやすい公共施設ですら「国産材に固執すれば入札で負ける」(別の大手ゼネコン幹部)のが実態だ。

足元は活況に沸くゼネコン業界だが、建設需要は「中長期的には縮小均衡に向かう」(樋口社長)。木造建築強化を打ち出した両社は業界に風穴を開けることができるか。

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