住友林業と熊谷組、名門タッグが目指すもの 住宅メーカーとゼネコン、それぞれの焦燥は
――ハウスメーカーとゼネコンの協業はあったが、過去の例も参考にしたか?
今回は上場会社の業務資本提携であり、これまでのように一方的な出資で傘下に入るのではない。数字上の違いにこだわることはない。会社の歴史も規模も違ううえ、伝統ある会社が筆頭株主になることは、当社にとって信用補完や自己資本が増えたときの買収防衛にもなる。
なぜ今、木造建築なのか
――ただ、提携発表直前、11月9日の3610円という株価から、足元は3100円程度。希釈化分を折り込み、株価は低迷している。
11月9日の記者会見以来、市場にもさまざまな反応があった。だが目先の業績で上下するのは本来の姿ではない。海外では社会貢献への姿勢も加味して投資をするのに、日本ではまだまだ短期的な結果で判断されてしまうのか、と思う。
株主に対しては、今回の提携は株主にも利益になることをアピールしていきたい。株式が希釈化されたから利益が減る、というのは短絡的だ。本当の投資家は中長期的に見ているのではないか。今後当社がESGに注力していると認めてくれれば、いずれ戻ってくるだろう。
――木造高層建築に需要はあるか。
需要はこれから喚起していく必要がある。現状ではコストと法規制のハードルがあるが、これがクリアできれば木造建築は普及していく。
学校や病院では間違いなく使われるだろう。公共建築では国産木材の使用を指定している物件もある。木材の耐火性についても、国土交通省は規制を緩和する方針だが、これも追い風だ。
むろん官公庁だけなく、民間での普及も不可欠だ。木材は軽い素材で、耐震性や施工性にも優れているため、後は耐火性や防音性などを技術でカバーし、普及を促していく。
台湾でも木化緑化事業の展開を検討しており、すでに現地の顧客からも話が来ている。
海外では20階建ての木造建築もすでに存在するうえ、コスト的にも他の部材と遜色なくなっている。都内に立つ300メートルもの超高層ビルでも、計算上では木造建築で実現可能だ。普及が進めば価格競争力も上がる。その先鞭をつけていきたい。
――同業他社は建設業以外の分野に進出しようとしている。その中で木造建築を選んだ理由は。
各社は賃貸事業や不動産事業、(空港や道路など公共施設の運営受託である)コンセッションなどを展開しているが、当社はあくまで建設業だ。建設技術を用いて顧客の役に立つことを目指す。木造建築を軸にした再開発事業も手掛けていく。われわれはもう不動産屋にはならない。
――今回の事業は何年先まで見据えているのか。
300年先まで見ている。少なくとも、森林は50年スパンで循環しているため、それくらいまでは見通さないといけない。今回は当社が先鞭をつけたが、他社が続いていけば、木造建築が普及の後押しになるし、むしろそうした流れになっていくべきだ。短期的な受注ではなく、長期的に考えることが成長には不可欠だ。
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