「野蛮人」による支配を許したイギリスの末路 スキャンダルが日常化、EU離脱も進まず
安定した政治、そして「ロールス・ロイス」とも呼ばれる非の打ちどころのない市民サービスを誇る英国が、混乱している。セックス、密談、政治献金、王室をめぐるスキャンダルのはざ間で、英政府は崩壊しようとしている。
英国の新聞もそう報じている。11月9日付の英タイムズ紙は、「欧州連合(EU)は、テリーザ・メイ政権の崩壊に備えていた」と、1面のトップで伝えた。同政権が権力を握って半年も経っていないのに、だ。
「かわいそうなテリーザ・メイ首相」
海外でもこの様子は伝えられている。11月初旬、米ニューヨーク・タイムズ紙は日曜版の読者に次のように伝えている。英国という船は「どこにも向かっていない。甲板で火災が発生し、その船長であるかわいそうなテリーザ・メイ首相は、進路を左にずらすのか、右舷側に曲がるのかを決定する権限もなくマストにくくり付けられている」。
また、アイルランドの作家、フィンタン・オウトゥール氏は、米国の書評誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』に、「ブレグジット(英国のEU離脱)は『大英帝国2.0』の幻想にあおられている。『大英帝国2.0』とは、古い植民地と本国が統合し誕生した、グローバル貿易帝国のことだ」と書いている。
正直なところ、ニューヨーク・タイムズ紙の指摘は大げさだし、オウトゥール氏の指摘はばかげている。よほどの夢想家でないかぎり誰一人として、この大英帝国が再構築されるとは信じていないし、そうなることを望んではいない。しかし、他人の不幸を喜ぶ気持ち(シャーデンフロイデ)は、あまりにも魅力的であり、考えずにはいられないのだ。英国は自国ほど統治されていない、と考えている国にとって、これは傲慢な英国に報復する機会なのである。
ここでの本当の疑問は、メイ政権が生き残るかどうかということだ。そして生き残れない場合、何が起きるのかということだ。