「野蛮人」による支配を許したイギリスの末路 スキャンダルが日常化、EU離脱も進まず
EU離脱を進める中で、数々のトラブルがメイ首相と英国に押し寄せている。同首相の閣僚の多くは、EU離脱支持者ではない。つまり、彼らは離脱が愚行であると思っていて、英国企業と金融機関が新たな状況の中で、準備するための時間をより多く持てるように、離脱までの期間を引き延ばそうとしている。
ブレグジットに最もかかわっている閣僚3人は、予想外の外務大臣、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏を含んでいる。同氏と激しく意見を異にしていた用心深い財務大臣、フィリップ・ハモンド氏は、離脱プロセスが進んでいるにもかかわらず、残留支持者だ。
ブレグジットの条件についてEUと主に交渉しているデイヴィッド・デイヴィス氏は愚かで、怠け者で、「ナルキッソスのように虚栄心がある」と、ボート・リーブ(離脱に投票を)のキャンペーンの元ディレクターに言われてしまう始末。与党上層部の者たちは残忍だ。
EU離脱交渉の悪化は避けられない
離脱交渉はいずれにしても、悪化するだろう。EUのミシェル・バルニエ交渉官は英国に譲歩しない、柔軟性に欠けるタイムテーブルを押し付けてきた。一方、英国が離脱前に支払わなければならない額は、交渉を進めるうえで障害となったままだ。
マイケル・ファロン国防大臣が辞職することになったセクシャルハラスメント・スキャンダルが拡大し、事態はさらに悪化している。ダミアン・グリーン筆頭国務相(実質的に副首相)はハラスメントと、自らの議会のコンピュータから見つかったといわれている「過激なポルノコンテンツ」の疑いと闘っている。
こうしたスキャンダルはとどまるところを知らず、英国では毎日のようにニュース速報や、新聞の1面で新たなスキャンダルが伝えられている。
たとえば、ジョンソン外務大臣の不用意な発言によって、スパイ罪でイランの刑務所に収容されている英国市民、ナザニン・ザガハリ・ラトクリフ氏の刑期は延びるかもしれない。
彼女がそこでジャーナリズムを教えていた、と誤って発言してしまったからだ。
また、保守党の主な援助資金提供者、アシュクロフト卿は、自らの財産の大部分をオフショア口座に保持していることを、「パラダイスペーパー」で公表されてしまった。
アシュクロフト卿だけではない。情報漏洩により、女王とその息子、チャールズ王子の両方が、タックスシェルターから恩恵を得ていたことも明らかになった。